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不妊治療のステップとは?まずは基本を理解

不妊治療のステップとは何ですか?

症状や原因に合わせて「タイミング法」から始まり、人工授精や体外受精、顕微授精へと段階的に進めていく治療法の流れです。
不妊治療は段階ごとに方法が異なり、年齢が若く、最初から高度な治療を必要とする原因が見つからない場合には、ステップアップしながら最適な治療を選んでいきます。
一方で、全ての不妊治療が、画一的に、一律にステップアップで行われるわけではありません。その方の年齢や不妊原因、卵巣予備能(卵巣内に卵子がどれくらい残っているか)等によっては、最初から人工授精や、体外受精、顕微授精を実施することも少なからずあります。
不妊治療が必要になる主な原因と背景
不妊症の原因は、男女双方にあります。WHOの報告では、男性側のみに原因があるケースが24%、男女双方に原因があるケースが24%となっており、男性側に原因があるカップルが不妊カップルの二組に一組ということになります。
男性の場合、精子の量や運動率の低下、性機能障害(ED)、女性の場合は排卵障害や卵管の異常、子宮内膜症などが代表的な原因です。 また、原因不明不妊と診断される場合もあり、検査では明確な理由が分からないことも珍しくありません。
近年、晩婚化が進み、結果的に妊娠を希望する年齢が上昇してきています。このため、加齢に伴う卵子の質の低下等から不妊で悩むカップルの割合が増えてきています。 国立社会保障・人口問題研究所の報告によると、実際に不妊の検査や治療を受けたことがある(または現在受けている)夫婦は22.7% で、夫婦全 体の約4.4組に1組の割合になり、その割合は調査をするごとに上昇しています。
不妊治療を始める前の準備

不妊治療を始める前にどんな準備が必要ですか?

不妊治療は夫婦二人で取り組むことになります。このため、不妊の検査、治療を受けることについて、まずは夫婦でよく話し合うことが大切です。
また、禁煙や、葉酸摂取も含め栄養バランスに気を付けること、適正体重の維持など、 生活習慣の見直しをすることが望まれます。
そして、前記の通り、不妊原因は男女両方にあり得ますので、ご夫婦そろって検査を受けることが必要です。
不妊検査を受けて原因を特定
不妊治療の第一歩は、不妊検査を受けて原因を明確にすることです。 女性の場合、基礎体温測定、ホルモン検査、超音波検査、卵管造影などが代表的な検査になります。
男性は主に精液検査を行い、精子の数や運動率を確認します。 原因が特定できれば最適な治療ステップを選択しやすくなりますが、原因不明不妊と診断される場合もあります。
この際も複数の検査結果をふまえ、医師とよく相談しながら治療の流れを考えていくことが大切です。
不妊治療の4つのステップ:内容と治療法を詳しく解説

不妊治療にはどのようなステップがありますか?

主にタイミング法、人工授精、体外受精、顕微授精の4つの方法があり、不妊の原因に適した治療を行います。
治療ステップの概要と流れ
不妊治療は、大きく分けて4つのステップがあります。
1つ目は排卵日を予測し適切なタイミングで性交を持つタイミング法、2つ目は洗浄した精子を直接子宮に注入する人工授精、3つ目は受精の過程を体外で行う体外受精、4つ目はさらに精子を卵子に直接注入する顕微授精です。
基本的にはタイミング法から開始し、状況に応じて順次、より高度な不妊治療のステップアップを検討します。しかしながら、年齢が高い場合や、卵巣予備能が低下している(卵巣内に残っている卵子が少ない)場合等、迅速に治療を進める必要がある場合には、最初から体外受精や顕微授精が適している場合があります。
また、例えば卵管が詰まっている場合はタイミング法や人工授精ではなく、卵管を通す治療を行うか、体外受精を行う必要があります。
精子の状態が悪い場合は、その程度に応じて、タイミング法でなく人工授精から、または、程度が重い場合は体外受精や顕微授精を最初から行う場合もあります。
それぞれの段階で、検査結果や治療の結果を見ながら、また年齢や卵巣予備能も考慮しながら、医師と相談し、最適な治療を決めていきます。
ステップ1:タイミング法・薬物療法
タイミング法は、排卵日を推定し、自然妊娠の可能性を高めるシンプルな方法です。年齢的に余裕があり、卵管や精子等に問題ない場合は、通常タイミング法から開始します。
基礎体温の記録や超音波検査、排卵検査薬等を用いたり、排卵期に増加する頸管粘液等で排卵日を推定し、適切なタイミングで性交渉を持つことが中心となります。
排卵障害がある場合は、排卵誘発剤を併用して排卵を促します。 タイミング法や薬物療法は、比較的負担が少なく、身体や経済的リスクも低いのが特徴です。
この方法で妊娠に至らない場合は、次の人工授精などの不妊治療のステップアップを検討します。
ステップ2:人工授精(AIH)
人工授精(AIH)は、パートナーの精子を洗浄・濃縮し、排卵のタイミングに合わせて子宮内に注入する方法です。
精子の数が少ない、運動率が低い、精液量が少ない、性交渉のタイミングが難しい、EDの場合などに有効です。
1回あたりの人工授精の成功率は数%~10%前後とされていますが、数回繰り返し試みて妊娠に至らない場合、体外受精など次のステップに進むことを検討します。
ステップ3:体外受精(IVF)
画像出典:https://www.denentoshi-lady.com/in-vitro-fertilization/flow/
体外受精(IVF)は、排卵誘発剤で複数の卵胞を育て、採卵した卵子と精子を体外で受精させる治療法です。
受精後、胚を子宮に移植することで妊娠を目指します。卵管に障害がある場合や人工授精で妊娠に至らなかった場合、また原因不明不妊や年齢による妊娠率の低下が懸念される場合に選択されます。
体外受精は費用や身体的負担も一定程度ありますが、ステップアップすることで妊娠の可能性を広げる大きなメリットもあります。
ステップ4:顕微授精(ICSI)
画像出典:https://www.denentoshi-lady.com/in-vitro-fertilization/flow/
顕微授精(ICSI)は、顕微鏡を用いて精子を1匹ずつ直接卵子へ注入する高度な不妊治療です。
主に重度の男性不妊(精子数や運動率の著しい低下など)のケースや、従来の体外受精で受精しなかったり、受精率が悪かった場合に適用されます。
治療の工程は体外受精と近いですが、受精方法が異なります。
近年では体外受精よりも顕微授精のほうがより多く行われています。
次のステップへの進むタイミングと判断基準

治療ステップを変更するタイミングはどう判断すれば良いですか?

次の治療へ進む判断は治療回数、年齢、治療の成功率等や、ご夫婦の希望も考慮しながら医師とも十分に相談した上で決めていきます。
治療を続けても結果が出ない場合や年齢などを考慮して、適切なタイミングで次のステップを検討しましょう。
タイミング法から人工授精への移行
タイミング法を数回試みても妊娠に至らない場合や、精子の数や運動率、精液量に軽度の問題がある場合には、人工授精へのステップアップが推奨されます。
一般的には、年齢がまだ若く、卵巣機能も保たれている場合は、タイミング法を数か月~半年程度続けて成果が得られなかった場合に次の治療法を検討します。
カップルの年齢や不妊期間、検査結果を総合的に考慮した上で、医師と密に相談して最適な治療プランを決定します。
人工授精から体外受精への進め方
人工授精を数回実施しても妊娠に至らない場合は、体外受精へのステップアップが検討されます。
年齢が30歳代前半までの若い場合は、一般的には人工授精を5〜6回試しても成果が見られない時がステップアップの目安です。
年齢が35歳を超えている場合や、卵管閉塞や精液所見が人工授精では妊娠が難しい場合等、明確な不妊原因がある場合は早期に体外受精を選択するケースも増えています。個々の状況に合わせてステップアップのタイミングを決めましょう。
体外受精から顕微授精へのステップアップ
体外受精で受精がうまくいかない場合や、精子側の問題によって受精率が著しく低い場合は、顕微授精へのステップアップが推奨されます。
例えば、精子の数が極端に少ない、運動率が低いなど重度の男性不妊のケースでは最初から顕微授精を選択することもあります。
患者さんごとの状況や過去の治療効果をふまえ、医師とよく相談して納得のいく選択をしてください。
不妊治療にかかる費用と保険適用の範囲と条件

不妊治療の費用や保険適用範囲はどのくらいですか?

治療法ごとに費用が大きく異なります。また、2022年から体外受精や顕微授精も保険適用になりました。経済面も含めて計画的に進めましょう。
ステップ別の費用の目安
不妊治療はステップごとに費用が異なります。
タイミング法や薬物療法は保険適用であり、1回数千円から1万円程度と比較的低額です。人工授精も保険適用で、1回の自己負担はは1回1〜2万円程度です。
体外受精は自費で実施すると、1回あたり30万円前後、顕微授精になると40万円以上かかりますが、保険で実施し、高額療養制度を活用すると、大幅に費用負担が軽減されます。
治療の流れやステップ別費用を事前に把握し、無理のない治療計画を立てることが大切です。
保険適用される治療内容と条件
2022年4月から、体外受精や顕微授精を含む多くの不妊治療が保険適用となりました。
タイミング法や人工授精も原則的に保険適用で、年齢制限や回数制限もありませんが、体外受精や顕微授精の保険適用には年齢制限や治療回数の上限など条件が設けられています。
例えば、体外受精・顕微授精は40歳未満の女性で、胚移植でカウントされる治療回数が通算6回まで、40歳~43歳未満の女性では、治療回数が通算3回まで、保険で実施可能と定められています。
高額療養費制度での経済的負担軽減方法
高額療養費制度は、月の医療費が一定額を超えた際に自己負担額が抑えられる公的制度です。
不妊治療、とくに体外受精や顕微授精など高額な治療を受ける際には非常に有効です。
条件を満たせば医療費控除も併用することができ、年間の治療費が一定額以上となった場合に所得税が還付されたり、翌年の住民税が軽減されることがあります。
積極的にこれらの制度を活用することで、経済的な負担を軽減し長期的な治療にも前向きに取り組むことが可能となります。
不妊治療に伴う心理的サポートとストレス対策

不妊治療のストレスや心の負担にはどう向き合えば良いですか?

専門のカウンセリングやパートナーとのコミュニケーションが大切です。
心理的サポートやストレス対策を積極的に取り入れ、心身のケアも意識しましょう。
治療中のストレスを軽減する方法
不妊治療中のストレス軽減には、リラクゼーションや適度な運動、趣味を楽しむ時間を持つことが効果的です。
また、悩みを抱え込まずパートナーと話し合いをしたり、医療スタッフに心理面も含めて相談することも大切です。
最近ではカウンセリングを積極的に利用する夫婦も増えています。
睡眠や栄養など生活習慣を整えることも体調維持やメンタル面の安定につながります。
自分を責めすぎず、心身の健康を最優先に治療に向き合いましょう。
夫婦でのコミュニケーションの重要性
不妊治療は夫婦で取り組むことが大切です。
お互いの気持ちや治療に対する考えを率直に話し合い、理解と支え合いを深めることで、困難な時期も乗り越えやすくなります。
意見の違いがあっても、一緒に情報収集やカウンセリングを受けるなど前向きなコミュニケーションを心掛けましょう。
また、感謝の気持ちやねぎらいの言葉をかけ合う時間を作ることも夫婦関係の安定には重要です。
パートナーの信頼が大きな支えになります。
モチベーションを保つヒントと支え方
長期間の治療では、気持ちの波やあきらめの感情が生じやすくなります。
小さな目標を持ち、治療以外の楽しみや日々の充実感を意識することがモチベーション維持に役立ちます。
また、治療中の感情を記録したり、同じ経験を持つ人と交流するなどの方法も効果的です。悩みが深いときはカウンセラーの利用や医師への相談を積極的に行いましょう。
自分とパートナーの努力や進歩を認め合い、無理なく前向きに過ごす工夫を大切にしてください。
まとめ:不妊治療のステップを理解して前向きに進めよう
不妊治療のステップや治療の流れ、ステップアップのタイミングやステップごとの費用、心理的サポートまで具体的に解説しました。より自分らしい治療選択と前向きなステップアップを心掛けてください。
不妊治療は一人で悩まず、パートナーや専門家と共に支え合いながら、最適な道を探しましょう。
不妊治療のステップアップにも役立つ情報を知ることで、安心して新たな一歩を踏み出せると感じていただければ幸いです。
(監修・執筆:河村寿宏)
