【医師監修】連休明けの不調を防ぐ「適切な休み方」- 寝だめは効果的? 睡眠時間を長く確保すれば休養できる?

2024/01/09 18:23公開

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お盆の時期、遠出はせずに自宅でゆっくり過ごすという方も多いのではないでしょうか。早起きする必要もなくのんびり過ごせる休日は最高ですよね。しかし普段の生活リズムとあまりに違う生活を送ると、連休明けの不調につながる恐れも。

そこで今回は、医師の甲斐沼孟先生に「適切な休養の仕方」についてお聞きしました。しっかり休養をしつつ、連休明けに調子が出ない…ということを防止するために、どのような過ごし方が適切なのかをまとめていますので、参考にしてみてください。



ーー連休中で睡眠不足を解消したいのですが、「寝だめ」は効果的ですか?


「寝だめ」とは、休日などにまとめて睡眠をとることを指しており、実際は睡眠をためるのではなく、平日の睡眠不足を補っている状態と言われています。

以前までは、寝だめをしても毎日の睡眠不足を解消することはできないと認識されていましたが、現在では、週末などにおける寝だめには一定の効果があるとの見解があります。

2018年のストックホルム大学における研究論文によると、平日は5時間だけの睡眠が続いていても、週末にまとめて9時間睡眠を確保して睡眠不足を補えば、死亡リスクが上昇しないと報告されました。

また、非常に疲れていて脳内の疲労物質因子が溜まっている時は、長時間に及ぶ睡眠を実行して寝だめすることによって、疲労を回復させる因子修復が追いつくとも考えられています。


ーー休み中に夜更かし。その後、睡眠時間を確保して長時間寝ましたが、休養できていますか?


1日に必要としている理想的な睡眠時間から1時間分の睡眠不足を補うためには、1時間多く睡眠をするだけでは効果が不十分であり、4日間連続で8時間前後の質の高い睡眠をとることが必要であると考えられています。

過去には厚生労働省が「睡眠不足が慢性的に長期間続くと疲労回復は難しくなるため、睡眠不足による疲労蓄積を予防するためには、寝だめをするだけではなく、毎日個々に応じた必要な睡眠時間を定期的に確保することが重要である」という見解を示しています。

連休中に夜更かしをしてしまったなど、不規則な生活を送った方は、まずは規則正しい生活のリズムを取り戻すように意識してみましょう。

単に就寝時間や起床時間を変えるだけでは、睡眠時間はある程度確保できても、睡眠の質が下がって結果的に日中ぼんやりして眠気が続くことになりがちです。規則正しい生活に近づけながら目覚めや寝つきを良くするために、朝起きたら必ずカーテンを開けて太陽の光を浴びて体内時計をリセットしましょう。


ーーゆっくり休んだはずなのに連休明けに不調…という場合、どのような原因が考えられますか?


連休中の旅行や外食などで食事の内容を規則正しくコントロールできない場合、「ゆっくり休暇を取得したにもかかわらず連休明けに不調……」という状態を引き起こすことがあります。

偏った食事から起こる不調が心身の状態に影響することも大いに考えられるので、連休中も野菜や魚料理、豆類や穀類など栄養バランスが優れた食品を摂取し、適切な食生活を送るよう心がけましょう。

また、連休の期間は、毎日の起床時間を気にせずに夜更かしをして朝に就寝する、あるいは帰省や旅行のためにいつもと違う時間帯に寝起きするなど生活リズムが崩れやすく、自律神経が乱れる傾向があります。

不規則な生活は、体の活動や休息のコンディションを調整している自律神経の乱れを招き、日中の活動量が減って慢性的に倦怠感を覚える、あるいは休息すべき夜間に目が冴えて眠れなくなり不調に陥るケースも見受けられます。

連休明けの心身の不調は、ストレスや不規則な食生活、自律神経の乱れなど、複数の要素が絡み合って引き起こされることも少なくありません。直接的な原因をひとつと決めつけず、不調に至るまでの生活全般を振り返り対策を講じることも重要なポイントとなります。


ーー連休明けの不調を防ぐためには、どのような過ごし方で休養することが適切ですか?


肉体的、あるいは精神的に疲れている人にとって、連休は貴重なリフレッシュの時間です。この機会に心身の疲労を回復させ、連休明けに仕事に臨む生活スタイルを送ることが理想的となります。

時間の限られた休日を楽しみつつ、心身の疲労を回復するための休息には、「パッシブレスト」と「アクティブレスト」の2種類があり、どちらか一方だけでは溜まった疲労は回復しにくいと考えられています。

主に、体と頭を安静な状態にして、ゆっくりと休ませる疲労回復法が「パッシブレスト」です。疲れやストレスなどにより起き上がれないほどの不調がある人は、まずは横になって安静にする、映画鑑賞や音楽鑑賞、アロマテラピーなどの「パッシブレスト」を行うことが重要です。

一方、休日でもストレッチやヨガ、散歩や軽いジョギング、近場への旅行やドライブなど積極的に体を動かすのが「アクティブレスト」です。軽いエクササイズを実践することで全身の血流が良くなり疲労物質が順調に排出され、精神的にもリフレッシュ効果が得られると考えられます。

ただし「アクティブレスト」を実行する際には、体を動かしすぎないことを注意してください。激しい運動はさらに疲労を蓄積させ、リフレッシュ効果を得られなくなってしまいます。余裕を残す程度に活動をとどめて、連休明けの活動に支障がないように留意しましょう。

これらの「パッシブレスト」と「アクティブレスト」の両方をバランス良く連休中に取り入れることで、一定の疲労回復効果が得られて連休明けの不調を予防できる効果が期待できます。



監修ドクター: 甲斐沼 孟(かいぬま まさや)先生

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TOTO関西支社健康管理室産業医。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医/大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医 /国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員 /大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師 / 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長


※この記事は、マイナビニュースに2023年8月12日に掲載されたものを転載しております。
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