この記事の監修者
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飯田 唯史
はんだ整形外科外科クリニック 院長
<経歴>
1991年 富山医科薬科大学(現 富山大学)卒業
富山医科薬科大学整形外科学教室入局
1992年 軽井沢病院
1993年 富山医科薬科大学大学院 入学
1997年 富山医科薬科大学大学院 卒業
糸魚川総合病院整形外科部長
1999-2004年 大分市 民間病院 整形外科部長
2004-2018年 能美市立病院整形外科医長
2018年4月 はんだ整形外科クリニック開院
<学位・資格>
医学博士
Effects of hydrostatic pressure on matrix synthesis and matrix metalloproteinase production in the human intervertebral disc
(静水圧がヒト腰椎椎間板基質合成 および分解酵素産生に及ぼす影響)
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
リウマチ財団登録医
ロコモアドバイスドクター
石川県立総合看護専門学校 非常勤講師クリニック公式HP(はんだ整形外科クリニック): https://handa-seikei.com
骨粗鬆症とは?骨の強度が低下して骨折しやすくなる病気

骨粗鬆症とはどのような病気ですか?

骨の内部がスカスカになり、わずかな衝撃でも骨折しやすくなる病気です。
骨粗鬆症は、加齢や長年の生活習慣によって骨の強度が低下する疾患として知られています。健康な若者の骨は内部に緻密な組織が詰まっていますが、本疾患が進行すると内部の構造が粗くなり、転倒して手をついた際や、しりもちをついただけでも骨折する危険性が高まります。
現代の日本では超高齢社会を迎え、健康寿命の延伸が重要な課題となっています。骨の強度が低下したことによる骨折は、要介護状態や寝たきりになる大きな要因の一つとなります。
そのため、単なる老化現象と見過ごすのではなく、骨を構成する成分の減少に早めに気づくことが重要です。見えない骨の健康に意識を向けることで、豊かな老後の生活を守る第一歩となります。
初期症状はほとんどない?「いつのまにか骨折」とは

初期段階で気づくことはできますか?

初期症状がほとんどないため、気づかないうちに進行しているケースがあります。
いつのまにか骨折の症状|痛みに気づきにくい初期段階と進行後のサイン
いつのまにか骨折は転倒などの明確な衝撃がなくても、日常生活のちょっとした負担で背骨が潰れている状態のことを言います。骨密度が減少していても、初期段階では痛みや身体の不調をまったく感じない方が少なくありません。
そのため、知らず知らずのうちに骨が弱くなり、咳やくしゃみといった日常のささいな動作で骨折してしまうケースがあります。痛みがないからといって安心していると、背骨の圧迫骨折などを引き起こし、突然激しい痛みに襲われる危険性があります。
目に見える不調が現れたときには、すでに病状が進行していることがほとんどです。だからこそ、痛みを感じる前に日頃からご自身の骨の状態に目を向ける意識が非常に大切です。
進行して現れる3つのサイン(身長低下・背中の曲がり・腰痛)
病状が進行すると、外見や体調に明らかな変化が現れ始めます。代表的なサインの一つが身長低下です。若い頃と比べて身長が2cm以上縮んだり、背中が丸くなっていると感じた場合、背骨が潰れてしまっている(圧迫骨折)可能性があります。
背骨が変形することで(円背)内臓が圧迫され、胃腸の不調や息苦しさを感じる方も少なくありません。
さらに、慢性的な腰痛も重要なサインです。重いものを持ち上げたり、長時間立ち続けたりした際に生じる背中や腰の鈍い痛みは、骨粗鬆症の進行を知らせる身体からのSOSかもしれません。
注意すべき「いつのまにか骨折」と骨折しやすい部位
自覚症状がないまま進行する「いつのまにか骨折」は、背骨(椎体)で発生します。背骨が一つでも潰れると周囲の骨にも負担がかかり、連鎖的に複数の骨折を引き起こすという悪循環に陥りやすくなります。
背骨以外にも、手首の骨(橈骨遠位)や太ももの付け根(大腿骨近位部)は非常に骨折しやすい部位です。
太ももの付け根を骨折してしまうと、手術や長期間の入院や必要となり、そのまま寝たきり状態になることもあり、注意が必要です。
なぜ骨はもろくなる?骨粗鬆症を引き起こす主な原因

なぜ骨はスカスカになってしまうのでしょうか?

加齢やホルモンバランスの変化、日々の生活習慣が複雑に絡み合って発症します。
骨の新陳代謝(骨吸収と骨形成)のバランス崩壊
私たちの骨は、一度作られたら一生そのままというわけではありません。古くなった骨を溶かして壊す「骨吸収」と、新しい骨を作る「骨形成」という新陳代謝を絶えず繰り返すことで、強靭な状態を保っています。
健康な状態であれば、骨を壊す働きと作る働きのペースが釣り合っているため、全体としての骨量は一定に維持されます。しかし、何らかの理由で古い骨を壊すスピードが新しい骨を作るスピードを上回ってしまうと、内部が徐々にスカスカになっていくのです。
長年の生活習慣の乱れや加齢によって新陳代謝のバランスが崩壊することが、骨粗鬆症を引き起こす最大の要因として知られています。
加齢と閉経による女性ホルモン(エストロゲン)の減少
骨の新陳代謝のバランスを崩す大きな要因として、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が挙げられます。エストロゲンには、骨の成分が血液中に溶け出すのを防ぎ、新しい骨を作る働きを促進するという重要な役割があります。
しかし、女性は50代前後の閉経を迎えると、体内のエストロゲン分泌量が急激に低下するのです。エストロゲンの強力な保護効果が失われることで、古い骨を壊す働きが過剰に活発になり、結果として骨密度が低下してしまいます。
50代から70代の女性において骨粗鬆症の発症率が圧倒的に高いのは、閉経に伴うホルモンバランスの急激な変化が骨の健康に直結しているためです。
ビタミンD不足や運動不足などの生活習慣
骨を丈夫にするにはカルシウムをたくさん摂ることが大切だと思われがちですが、実はカルシウムを体にしっかり吸収させるためには、ビタミンDが欠かせません。ビタミンDが不足した状態では、食事からカルシウムを摂っていても十分に骨に取り込むことができず、強い骨を作ることが難しくなります。
また、骨は物理的な刺激を受けることで強度を増す性質を持っています。そのため、運動不足によって骨に適切な負荷がかからない生活を送っていると、骨量は次第に減少していくのです。極端なダイエット経験も深刻な栄養不足を招き、若い女性の将来的な骨粗鬆症リスクを高める要因となります。
さらに、過度なアルコール摂取や喫煙の習慣は、栄養素の吸収を妨げ、骨のもろさを進行させる原因となるため注意が必要です。
遺伝的体質や特定の病気・薬の副作用
生活習慣や加齢だけでなく、生まれ持った遺伝的体質も発症に深く関与しているのです。親族に骨粗鬆症と診断された方や、太ももの付け根を骨折した経験のある方がいる場合は、ご自身も同様の弱い骨の体質を受け継いでいる可能性が高くなります。
また、特定の病気や治療薬の副作用によって骨がもろくなる「続発性骨粗鬆症」と呼ばれるケースも存在します。例えば、関節リウマチや糖尿病、甲状腺疾患といった持病を抱えている方は、病気自体が骨の代謝に悪影響を及ぼすことが少なくありません。
さらに、激しい炎症を抑えるためにステロイド薬を長期間服用している場合も、新しい骨を作る働きが抑制されるため、若年層であっても十分な注意が必要です。
あなたは大丈夫?骨粗鬆症リスクをセルフチェック

自分が骨粗鬆症になりやすいか確かめる方法はありますか?

生活習慣や過去の出来事を振り返ることで、ご自身に潜む発症リスクをセルフチェックできます。
以下の項目にいくつ当てはまるか、ぜひセルフチェックを行ってみてください。
* 閉経を迎えた あるいは45歳で閉経を迎えた
* 以前より身長が2〜3cm低くなった
* 壁に背中をつけて立つと、後頭部がつかない
* 背中や腰が曲がってきたように感じる
* 運動習慣がほとんどない
* 喫煙習慣がある
* 多量のアルコール摂取がある
* 両親に骨粗鬆症と診断された人がいる
病気を未然に防ぐためには、まずご自身の現在のリスクを正しく把握することが第一歩となります。閉経を迎えた女性であるか、過去に極端な食事制限のダイエット経験があるか、あるいは日常的に運動する習慣がないかといった項目は、骨の脆弱化を予測する重要な指標です。
また、血縁者に骨折歴があるかどうかも、遺伝的な傾向を知るうえで欠かせない確認ポイントです。当てはまる項目が多い方ほど、将来的に重大な骨折を引き起こす危険性が高いと言えます。
少しでも不安に感じる要素が見つかった場合は、市販のサプリメントだけで済ませるのではなく、専門の医療機関への受診を前向きに検討するきっかけにしてください。
画像出典:はんだ整形外科クリニック

セルフチェックで思い当たる項目があった場合、どうしたらよいでしょうか?

セルフチェックに一つでも当てはまる場合、すでに骨が弱くなっている可能性があります。
自覚症状がなくても病気が進行していることがあるため、速やかに整形外科などの専門医療機関を受診することをおすすめします。
病院では、現在の骨の量を測る検査や、血液中の成分を調べる検査などを行い、骨の状態を正確に評価したうえで診断を行います。
現在の骨量を知るための「骨密度検査」
骨粗鬆症の診断において最も基本となるのが、現在の骨量を数値化する骨密度検査です。複数の検査機器が存在しますが、中でも「DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)」と呼ばれる方法は、非常に精度の高い測定が可能です。
DXA法では、骨折リスクが高いとされる腰の背骨や太ももの付け根に微量なX線を当てて、骨の密度を正確に測定する仕組みです。検査結果は、20代から40代の健康な若年成人の平均骨密度を100パーセントとした「YAM値(若年成人平均値)」という指標で示されます。
ご自身のYAM値が70パーセント以下であった場合、骨粗鬆症と診断される基準となります。痛みを一切伴わない簡便な検査なので、安心して受けることができます。
画像出典:はんだ整形外科クリニック
血液や尿で調べる「骨代謝マーカー」などの検査
骨の量を知る検査に加えて、血液検査や尿検査で「骨代謝マーカー」を調べることも非常に有益です。骨代謝マーカーとは、古い骨を壊す働きと新しい骨を作る働きが、それぞれどの程度のスピードで行われているかを示す指標です。
骨密度の数値だけでは把握しきれない、今後の骨量減少のスピードを予測できるという優れたメリットがあります。現在骨量が正常範囲内であっても、骨代謝マーカーの値が高い場合は、将来的に骨がもろくなるリスクが極めて高いと判断できます。
さらに、検査によって現在服用している治療薬の効果が的確に表れているかを確認できるため、患者さん一人ひとりに最適な治療計画を立てるうえで欠かせないプロセスとなっています。
必要な場合は専門医による薬物療法を検討する
各種検査の結果、骨粗鬆症と診断された場合や骨折のリスクが高いと判断された場合は、整形外科などの専門医による本格的な治療が開始されます。食事の改善や適度な運動を取り入れると同時に、症状の進行具合に合わせた薬物療法を検討することが一般的です。
現在では、骨が溶け出すのを強力に防ぐお薬や、新しい骨を作る働きを促進するお薬など、多様な選択肢が用意されています。痛みがまったくない段階であっても、将来の寝たきり状態を回避するためには、医師の指導のもとで継続的な治療を行うことが不可欠です。
健康診断で骨密度の低下を指摘された方は、放置せずに早めに整形外科を受診し、ご自身に合った対策を相談してください。
まとめ:症状が出る前に気づくことが、骨折予防の第一歩です
ここまでの解説から、骨粗鬆症は加齢や閉経、生活習慣の影響によって骨が弱くなり、自覚症状のないまま進行する病気であることがおわかりいただけたと思います。
特に注意が必要なのが、痛みを感じないまま背骨がつぶれてしまう「いつのまにか骨折」です。気づかないうちに骨折が起こり、身長の低下や背中の曲がりにつながることも少なくありません。
こうした骨折を防ぐためには、症状が出る前の段階で異変に気づき、早めに検査を受けることが何より重要です。
セルフチェックで思い当たる点がある場合は、自己判断せず、整形外科などの専門医療機関にご相談ください。
早期発見・早期対応が、将来も自分の足で歩き続けるための大切な一歩となります。
