【どう連携している?在宅医療の現場から】ファミリークリニック綾瀬院長・古澤先生+統括院長・廣田先生×愛・グループホーム木売・清水さん

2024/06/26 10:22公開

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2025年には29万人が必要とするとされる在宅医療は、医師、ケアマネ、ヘルパー、薬剤師など多くの専門職によって支えられています。2024年6月施行の診療報酬改定2024では、医療・介護・障害福祉サービスの連携強化が促されていますが、在宅介護と在宅医療はどう連携していくべきなのでしょうか?

今回は、在宅医療に力を入れている、ファミリークリニック綾瀬院長の古澤裕之先生と統括院長の廣田智也先生、そして愛・グループホーム木売の清水里美さんに、それぞれの立場からの在宅医療における他業種との連携の重要性や、上手に連携するコツを伺いました。

お話を聞いたのは

笑顔が素敵な在宅医療チーム


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(写真左:清水さん、中央:古澤先生、右:廣田先生)


――本日はお時間をいただきありがとうございます。医師とケアマネージャー、それぞれの立場から見た在宅医療についてお話を伺っていきますが、ぜひ「本音ベース」で色々と教えていただきたいと思います。


清水さん:本音!ちょっとドキドキしますが、よろしくお願いいたします。


廣田先生:ちょっと怖いところもありますが、貴重な機会なのでぜひ「本音ベース」でよろしくお願いいたしますね。


――廣田先生には以前もインタビューでお話を伺いましたが、その時に「笑顔」を大事にしていると伺いました。同じくチームを組んでいる古澤先生やケアマネの清水さんも全員笑顔が素敵ですね。


※廣田先生のインタビュー記事はこちら

廣田先生:確かにそうですね!清水さんの笑顔は本当に素敵だと思います。訪問診療を受ける患者さんにとっても、心置きなく頼れる雰囲気を持っていますよね。


――確かに・・・可愛がられてお菓子を貰えるくらい懐に入れる印象はありますね。


清水:そんなことないですよ(笑)ただ、笑顔で接することで安心していただいたり、リラックスしていただけることもあることはあります。患者さんにとってプラスに働いていたらとても嬉しいです。


古澤先生:ケアマネさんが患者さんから信頼されると、私たち医師にとって必要な情報もしっかりと取得していただけるので、清水さんのような方は本当にありがたいです。


――素晴らしいチームなのですね。ぜひこういった医師とケアマネの連携についてお話を伺わせてください。


ケアマネが医師に相談する際には「家族の代理人の視点は忘れてはいけない」


――訪問診療が行われる時に、医師とケアマネはどのように連携されるのでしょうか?業務の流れについて教えてください。


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清水さん:医師と連携をとる前に、まずはケアマネが患者さんの自宅に訪問します。そこで日常生活の様子を見るんです。


私が大事にしているのは、健康面のサポートの方法です。通院が出来ていないとか、薬が残っているとか、家族が通院に行くのが大変とか、具体的な話を聞いていきます。訪問診療を提案するかどうかは、こうした情報を確認するところから始まります。そして、患者さんやご家族が訪問診療を利用したいとなった時に、医師にお願いすることになります。


私が医師に連絡するときに大事にしていることは、「家族の代理人の視点は忘れてはいけない」ということです。患者さんとその家族の目線からの健康管理をお願いすることで、より快適な生活が構築できると考えています。


――清水さんから相談をされた後は、先生方はどのように作業をしていくのでしょうか?


古澤先生:清水さんからの情報を我々で受けとった後は、患者さんの自宅に初診で伺い、直接お会いして話を聞くことになります。部屋の様子のほか、介護する家族の有無、家族が介護する頻度も見ています。例えば、家が掃除されていたら家族の面倒見がいいなど、ある程度の傾向はわかります。もちろん薬の管理や病気の状況についても詳しく聞きとります。


医学的に正しい検査や薬の内容を提案することになりますが、医学的に正しいことが常に家族や本人にとって100点じゃないこともあります。提案したときに、「それは・・・」と躊躇するような反応があったときには、対応を考慮し、患者さんや家族とすり合わせながらより良い方法を探します。


ただ、医学的に正しいことなのにできないことがあるのは、正直もどかしい部分もあります。私のスタンスとしては、やった方がいいことは伝えた方がいいと思っていますので、一度はしっかりと伝えるようにしています。


廣田:すり合わせについては、事前に依頼書を送ってケアマネさんに詳しく書いてもらっています。


家族のことをより深く知っているのがケアマネさん。患者さんやそのご家族の性格や触れてほしくはない部分などをあらかじめ依頼書によって知ることができるのはとてもありがたいです。患者さんとそのご家族をよく理解した上で診察すると訪問診療がとてもスムーズに行えます。


「担当者会議」で情報共有し、患者さんの希望に添える形を考えていく


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――情報共有の精度が適切な医療提供の大きな鍵を握るのですね。普段はどのような方法を使って連携していますか?


廣田先生:一つの方法として担当者会議を開いて情報共有しています。患者さんの訪問診療の関係者が一堂に会して、患者さん本人の希望や状況を確認しながら、どうやって希望に添えるか考えていく会議になります。


古澤先生:デジタルサービスはMCS(メディカルケアステーション)を利用しています。また、1回の診察ごとにFAXを送ることと、担当者会議を開いて全体で情報共有することを行なっています。どうしても患者さん1人に避ける時間は限りがあるので、よほど大きな変更点がない限りは、この方法で進めていきます。


――急に医師に相談したいことが出てきた場合はどのようにしているのでしょうか?


清水さん:私は先生が所属しているクリニックに電話をして話をしていますね。先生方が診察などで対応ができない時でも、事務の方に話をすることで先生に状況報告をしていただくことができます。むしろ事務の方を通すことで、先生に伝えるべき情報かどうか仕分けをしてくれることが多くてありがたいと感じています。抱えている情報をどこまでも先生に伝えればいいのかわからないことがあるんです。


ケアマネから見た「頼れる訪問診療医」は「フットワークの軽い方」


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――ケアマネから見て、「頼れる訪問診療医」とはどのようなタイプでしょうか?


清水:フットワークが軽いことが一番大事かなと思っています。私たちケアマネは、まず地域包括医療センターなどから依頼が来ます。実際に患者さんのところに行って、これは健康管理が訪問診療でないと難しいと思ったときに、情報が十分ない状態でも相談できて、そしてすぐに来ていただける医師がありがたいですね。


――フットワークの軽さという視点でみるとファミリークリニック綾瀬はいかがですか?


清水さん:フットワークはとても良いです。気軽に相談できてありがたいです。


あとは適切で具体的な助言や指導が多いとも感じています。それは先生方の専門分野以外のことででもです。どうしても出来ることと出来ないことってあると思うのですが、先生方は決してすぐに「無理」や「出来ないよ」などと言わず、いつも出来ることを考えてくれると感じます。


また、先生方をはじめ、ドライバーさんや看護師さん、事務の方たちがチーム一体となって動いている印象を持っています。介護はチームワークが大事なのでファミリークリニック綾瀬の方たちとは一緒に働くのがとても気持ちがいいです。


古澤先生:私たちのクリニックは、とにかくフットワークを軽くしています。準備出来次第出発して、いつも「できることはないか?」という考えから始めています。

よそのクリニックでは嫌がる訪問診療医も多いですが、場合によっては患者さんの事前情報が不十分な状態でも行く時があります。でも、そんな時にこそ医師の力量が問われると思っています。


訪問診療医から見た「頼れるケアマネ」とは


――清水さんからはフットワークが軽い医師が頼り甲斐があるとのお話をいただきましたが、逆に訪問診療医から見て信頼できるケアマネージャーはどのようなタイプでしょうか?


古澤先生:まさに清水さんのような方が頼り甲斐がありますね。患者さんの情報も頑張って取ってきてくれるので、診察のイメージをつけやすく、とても助かっています。


清水さんのような「患者さんとその家族が話しやすいケアマネさん」は医師としてはありがたいですね。患者さんやそのご家族にとっては、医者には言いづらいけどケアマネには言いやすいということがあると聞いています。私たちが帰った後に、ケアマネさんに「あの時先生には言えなかった」「痒かったけど軟膏もらい忘れた」などの相談するケースがあるんです。もしもケアマネさんにも言えない状況が続いてしまうと、訪問診療に対して不満が溜まってしまうことにつながると思います。


廣田先生:別の視点で私が挙げるとすると「気軽になんでも相談してくれるケアマネさん」でしょうか。私たち医師からすると、どんな些細な情報でもいいので、医師にも情報を共有してほしいと思っています。そうした情報を吸い上げて、患者さんにとってベストな治療をするのが大事だと思っているからです。方法は特に問わないので、メールでも電話でもいいので連絡してほしいですね。


クリニックや医師に連絡することに構えてしまうケアマネさんも少なくないんですが、そこは私たち医師側も努力が必要だと思うんです。実際に、ケアマネさんから「忙しいんですよね?」と言われちゃうことが多いので、連絡をいただくハードルを下げていきたいと考えています。


清水さん:廣田先生が来たときに、私以外の他のスタッフにも挨拶してもらったことが強く印象に残っているんですよね。私のイメージでは白衣を着てくる先生が多かったのですが、そうじゃないフレンドリーなところも良かったと思っています。スタッフからも「廣田先生とは安心して話ができる」と言われています。ここまで話しかけやすい人も珍しいとは思いますけどね(笑)。


ただ、先ほどの廣田先生のお話を伺うと、私たちケアマネの方でも医師に対して心の壁を作っていたかもしれないと思います。これからは今まで以上に必要な情報を随時共有できるようにしたいです。


「連携しづらい医師」「連携しづらいケアマネ」の特徴は?


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――ここまでは一緒働きたいタイプの人を伺いましたが、逆に一緒に働きたくない人はどのようなタイプでしょうか?


清水さん:私たちが相談したときに、「時間外だからできません」とバサっとお断りされたり、「そういう要望には応えられない」と相談の入り口からシャットアウトされてしまうと困ってしまいますね。私たちケアマネも患者さんの健康について思いを持って医師に相談をしているので、「私的には一生懸命言ったのに・・・」と落ち込むこともあります。


些細なエピソードになるのですが、ある介護スタッフから、患者さんの指輪がはまり込んでしまったので先生にどう取ったらいいか相談したら「それはうちの科の案件じゃないから」と言われたと報告があったんです。私も報告してくれたスタッフに対して、「そうだよねぇ・・・」と言わざるを得なかったんですが、それがショックでした。


廣田先生:「うちの科じゃないから」という対応は総合病院であれば、対応としては合っていると思いますが、訪問診療の場合では適切ではないかなと思いますね。患者さんが置かれている環境や家族のことまで、全て見るというのが訪問診療だと思っています。「できない」と言うのは簡単ですが、自分たちのクリニックで対応できないなら他を紹介するとか、対応のしようはあると思います。少なくとも困っているからクリニックに電話をもらっているので、そこには応えたいですね。


――古澤先生と廣田先生が一緒に働きにくいと感じるケアマネさんはどのようなタイプでしょうか?


古澤先生:あらゆる職種の方がプライドを持って在宅医療を受ける患者さんに向き合っていると思います。特にケアマネさんは、大変な労力を割いてケアプランを作ってくれていますが、医師の立場から見たときに、医学的視点から改善したほうがいいと感じる時はあります。そうした時に、「いや、これで行くから」と理由なく医師側の考えを否定されてしまうと、相談できないので困ってしまいますね。


廣田先生:私は、あえて挙げるとすると話しにくい人ですね。たまに、なぜかすごく高圧的な方がいらっしゃるんですよね(笑)。あとは、コミュニケーションを取ることが苦手な人は、連携が取りにくいなという印象があります。そういった方の心の壁を打ち崩せないのは私が未熟だからと思うのですが、その壁があることで患者さんに不利益が出ることは避けなくてはいけないと思います。


訪問診療の患者さんと接するときに大切にしていることとは


――今後ますます在宅医療の重要性は増してくると思いますが、皆さんが患者さんと接する時に大事にしていることを教えてください。


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清水さん:「最初に介護相談の窓口になる」ということを強く意識しています。実際に患者さんとお話する時には、私はケアマネであるという立場からの話ではなく、雑談から入るんです。出身地を聞いた時に「山形よ」と言われると、「芋煮が美味しいよね?」と共通の話題を作ったりします。ご家族とお話をする時には、患者さんの昔話とか聞きますね。そこから家族の歴史などを聞くことができます。時間をかけて丁寧にお話をしないで、いきなり仕事としてのヒアリングから入ると、必要十分な情報が得られないと考えています。


古澤先生:私も患者さんの家に行ったら、家の様子を見て、部屋に飾ってある賞状やトロフィーなどについて話題にしていきますね。もちろん出身地トークもします。


実はこうしたコミュニケーションは治療を進める上でも役に立っています。実際に私の患者さんで、認知症によって怒りっぽくなっている方がいました。その方と出身地について話をした際に、私が栃木県出身だと伝えたら、その方も同じく栃木県出身だったことがわかり、急に距離感が縮まりました。そのことで治療方針についての説明などがとてもスムーズになりましたね。


廣田先生:コミュニケーションが取りやすい医師でいるということは本当に大事なことです。清水さんや古澤先生がお話になっていた、雑談から入って患者さんとの距離を縮めるというのは大事だと思います。


あとは私が大事にしていることは、目線を低くするということです。これはコミュニケーションが取りやすくすることにも通じているのですが、同じ高さに目線がないと話しにくいですよね。あとは、いつも笑顔でいることは強く心がけています。無愛想な医師には話しかけにくいですから。


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――今回は、在宅医療に力を入れている、ファミリークリニック綾瀬院長の古澤裕之先生とファミリークリニック荒川・ファミリークリニック綾瀬の統括院長の廣田智也先生、そして愛・グループホーム木売の清水里美さんに、お話を伺いました。皆さんから伺った話の内容も真摯な思いが伝わるものでしたが、一番強く印象に残ったのは3人の笑顔でした。チームで患者さんの健康に向き合う在宅医療の現場では調整が難しい状況も多々出てきますが、この笑顔によって円滑に進むシーンが多いのではないかと感じるインタビューとなりました。


(執筆:メディコレ編集部)

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