日々の生活の中で目の疲れや違和感は多くの人が感じることかもしれません。
しかし、はっきりとした自覚症状がないまま進行する目の病気は多く、特に緑内障や白内障を発症した場合、気づかないうちに視力が失われる危険があります。また、検査結果から糖尿病や高血圧など全身の疾患が発見されるケースもあるため、自分の目の状態を定期的に把握することはとても大切です。
今回はそんな眼科検診の重要性について江口眼科病院の江口秀一郎院長にお話しいただきました。また、同病院で視能訓練士として勤務されている鈴木智哉さんには視能訓練士の仕事内容や役割についてお話しいただきました。
お話を聞いたのは
検診で異常が見つかった場合は数か月以内に受診を

――健康診断や人間ドックの眼科項目で異常が見つかった場合、放置しても特に問題ないでしょうか?
眼圧と眼底写真の検査を実施することが多いですが、これらで異常が指摘された場合、重篤な目の病気が潜んでいる可能性があります。必ず専門医を受診するようにしてください。
――どのくらいの期間内に受診すべきでしょうか?
数カ月以内には受診したほうがよいでしょう。半年や1年も放置するのは危険です。なぜなら、目の病気には急激に進行して強い自覚症状が出るものと自覚症状があまり出ずにじわじわと進行するものの2種類があり、後者の場合は気づかないうちに病気が進んでいる可能性があるからです。
――視力低下で引っかかった場合、どのような病気の可能性があるでしょうか?
世代によりますが、中高年の方であれば白内障や目の奥にある網膜の病気の可能性があります。一方で若い方は結膜炎などで目の表面が傷ついていたり、そもそもメガネやコンタクトレンズの度数が合っていなかったりすることが要因として考えられます。
――眼圧で引っかかった場合は別の病気が考えられますか?
一般的には緑内障が考えられます。緑内障には原因不明の原発性と他の病気から二次的に発症する続発性の2種類があり、続発性は目の炎症や糖尿病網膜症による眼圧の上昇などが原因で起こります。いずれにしてもどちらの状態であるか特定することが重要です。
――中間透光体混濁で要受診となった際に考えられる病気についても教えてください。
最も考えられる病気は白内障です。ただし、硝子体の出血や角膜の傷・炎症などが原因で眼底写真の映りが悪くなり、中間透光体混濁を指摘されることもあります。若い方で指摘された場合は白内障以外の病気の可能性を考えたほうがよいかもしれません。
近視は病気と捉え、子どものうちに積極的な治療を

――ここまでのお話をふまえ、眼科検診はどれくらいの頻度で受けるのが望ましいとお考えでしょうか?
40歳以上は有病率も高くなるため、年に一度は検診を受けていただきたいと思います。若くて目の異常を感じていない方でも3年に一度は受診することが望ましいと考えます。
――最近は小学生をはじめとした子どもの視力低下も進んでいます。親はどのようにして子どもを矯正治療に導いてあげればよいでしょうか?
学校の視力検査でC以下の判定が出た場合は近視が始まっている可能性があります。近視を放置すると年齢を重ねたときに白内障や緑内障、網膜剥離、黄斑変性などの病気になる確率が上がります。このような点から近視をある意味で病気と捉え、お子さんが将来不幸にならないためにも親御さんはコンタクトレンズを手がかりに近視抑制を積極的に検討してください。
自分たちのことだけを考えるのではなく、地域のためにも役立ちたい

――ここからは病院のことや院長先生のお仕事に焦点を当ててインタビューしていきます。先生のご専門や、貴院の特徴を教えてください。
私の専門は、主に白内障や前眼部の手術です。臨床では屈折矯正から網膜剥離、硝子体の治療までほぼすべての分野の手術をおこなうことができます。
また当院の特徴としては、特定の疾患のみを専門とするのではなく、さまざまな分野の高い医療を地域へ提供していることです。
――病気やけがで角膜を損傷した人への献眼をおこなうアイバンク活動にも取り組まれていますね。
そうですね。仕事を終えた後の夜間や深夜の時間帯におこなうことが多いです。当院のことだけを考えるのではなく、地域のために役に立てたらという想いで活動を続けています。
――最後に来院を検討している読者へメッセージをお願いします。

患者さん一人ひとりを丁寧に診察したいという想いで取り組んでいます。そのため、待ち時間が長くなってしまうことがありますが、どうかご理解いただけると幸いです。
また、私の外来も予約が取りにくい状況にありご迷惑をおかけしています。ただ、当院にはドクターが多数在籍していますので、重篤な症状でなければまずは彼らの診察をご検討いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
眼科医療は問診から始まる

――最初に視能訓練士の仕事内容と、眼科に視能訓練士がいるメリットについて教えてください。
視能訓練士は乳幼児から高齢者までを対象にさまざまな検査をおこなっており、医師の診断と治療に必要な情報を提供しています。また、子どもの斜視や弱視の機能回復訓練を担当することもあります。患者さんと医師の間に立って眼科医療をサポートすることが視能訓練士の役割です。メリットは患者さんにとって視能訓練士がいることがリラックスできる材料になることが挙げられます。
――貴院ではどのような役割を担っているのでしょうか?
検査室室長という立場ではありますが、やっていることは他の視能訓練士と変わりません。視力や視野、斜視、弱視の検査、そして眼鏡やコンタクトレンズの処方など眼科全般に関することを幅広く担当しています。
――仕事で大切にしていることは何でしょうか?
患者さんの訴えをよく聞くことです。眼科医療は問診から始まるとも言われています。患者さんの「見づらい」「乾く」「痛い」といった多岐にわたる訴えから原因を特定し、適切な検査を組み立てるのが私たちの仕事です。
「こちらの病院に来て良かった」という言葉がモチベーションになる

――患者さんから届く相談で一番多いものは何でしょうか?。
見えづらさに関する相談が多いです。その中の一つに「かすむ」という症状がありますが、白内障によるものから近視や遠視、乱視によるピントのずれまで原因は様々考えられます。
そのため、やはり丁寧な問診と検査が重要になってきます。
――最後に来院を検討している読者へメッセージをお願いします。

近年はスマートフォンやパソコンの普及により、子どもの近視が急増しています。当院ではお子さんの近視抑制治療もおこなっていますので、該当する方は来院をご検討ください。また、生活習慣病の増加に伴い、成人の受診の重要性も増しています。自覚症状がなくても年に一度は眼科検診を受けていただきたいです。最初は電話によるご相談でも構いませんので、ぜひ一度ご連絡ください。
――北海道・函館に所在する江口眼科病院。お二人の医療に対する熱意や患者さんを想う気持ちは熱いものでした。院長先生は大変ユーモアもある方で、人の心をほぐすことが本当にお上手でした。このような点も当院が評価される一つの所以だと感じます。
(取材:メディコレ編集部)
提供:クーパービジョン・ジャパン株式会社
