目の病気は、加齢や生活習慣によって気づかないうちに進行してしまうもの。中でも、緑内障は40歳以上の日本人の約20人に1人がかかるとされ、自覚症状がほとんどないまま視野が失われていくケースも少なくありません。
こうした病気の早期発見に欠かせないのが、眼科検診です。
今回は、千葉県茂原市の今井眼科医院院長の今井先生と、視能訓練士の伊藤さんにお話を伺い、眼科検診の重要性や地域で完結できる医療体制、患者さまへの思いなどについて語っていただきました。
お話を聞いたのは
自覚症状ゼロでも進行する「見えているつもり」の危険性
──健康診断や人間ドックで、眼科の項目に引っかかってしまった場合、特に症状がないことも多いと思うのですが、そういった際は放置しても大丈夫なのでしょうか？
もともと人間ドックや健康診断は、いわば「荒いザル」にかけて異常の可能性を拾うスクリーニングの役割を担うものです。特に目は左右に2つあるので、片方に異常があってももう片方が正常であれば気づかないことが多々あります。だから、自覚症状がなくても病気が隠れていることも決して珍しいことではないんです。
──自覚症状がなくても、注意した方がいいんですね。
はい。例えば緑内障だと、視野が欠けていてもほとんどの方は自覚できません。視力が両目1.2の数値であっても、末期に近い緑内障というケースもあります。
──検診でよく見つかる異常には、どんなものがありますか？
多くなっているのは、いまお伝えした緑内障ですね。眼底写真で確認できるのは、視神経が集まる神経乳頭の変化と、視力の中心を司る黄斑部の変化です。この2つの異常が多く見られます。ただし、眼底写真は網膜の中心部しか写せないため、周辺部にある病変は写らないことがあるんです。
統計では40歳以上の約20人に1人が緑内障といわれますが、実際にはそれ以上と考えられています。40代を目安に、定期的な眼科の受診をおすすめします。
眼科の受診と生活習慣が肝心
──「視力低下」で引っかかった場合は、どんな病気が考えられますか？
50、60代以降に多いのが白内障です。白内障があると、眼底写真が曇りガラス越しのようにぼやけて写ります。もう一つは加齢黄斑変性症などの黄斑疾患です。初期なら経過観察ですが、早期に見つけることで必要なときにすぐ治療でき、視力を守ることができます。
──では、眼圧の数値に異常があった場合は、どんな病気が考えられますか？
多く挙げられるのが緑内障です。一般的には「眼圧が高くなる病気」というイメージがあると思いますが、日本人で多いのは正常眼圧緑内障なんです。つまり、眼圧が正常でも緑内障になっている場合が非常に多いです。
ですから眼圧だけではなく、眼底写真もセットでチェックすることが大切です。眼圧が正常でも、神経乳頭に異常があれば緑内障が疑われ、精密検査に進む必要があります。
──日常生活の中で、眼圧を整えるにはどうしたらよいのでしょうか？
基本的には、規則正しい生活が大切です。それから意外なところでは姿勢や習慣も作用します。例えば、水を一気に大量に飲む、うつむいた姿勢を長時間続ける、枕が高すぎる。こうした習慣が眼圧を高めてしまう場合もあります。
生活習慣の影響は、意外と侮れないものなんです。
地域の人たちに寄り添った眼科医療を提供し続けるために
──ここから少し視点を変えて、今井眼科医院ならではの強みについてお聞きできればと思います。
都心部には大学病院や専門施設が多く、交通の便も良いですが、郊外ではそうはいきません。特にご高齢の方にとっては、遠方まで通うのは非常に大きな負担になります。
そのような状況だと、一度は受診できたとしても通院が継続できないことも少なくありません。だからこそ当院では「できる限りこの地域で治療を完結させる」という思いを強く持っています。
──公式HPには豊富な手術実績が掲載されていますが、この背景にもそのような考え方があるのでしょうか？
はい。基本的に可能な手術はすべて当院で行います。白内障であれば、ほぼどんな症例でも自院で対応します。緊急性の高い疾患は大きな病院をご紹介していますが、それ以外は「ここで完結する」ことを大切にしていますね。
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
当院は、医師もスタッフも一つのチームとして、皆さんの目の健康を守るために全力を尽くします。「こんなこと聞いていいのかな？」ということでも構いません。気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。
患者さまの暮らしにまで目を行き届かせる
──視能訓練士とは、どのようなお仕事なのでしょうか？
一言でいうと、眼科での検査や訓練を担当する専門職です。視力検査や視野検査、手術前後のフォローアップ、小児の斜視や弱視の検査・訓練などを担っています。
──視能訓練士には、どのようなことを相談できますか？
視能訓練士が得意な分野の1つに、近年注目されている「アイフレイル」があります。本が読みにくくなったり、ちょっとした段差でつまずきやすくなったり、そういった日常生活でのお困りごとについても、解決策のご提案が可能です。
──実際に提案をして、患者さまにいい変化が見られた事例を教えていただけますか？
たとえばメガネ合わせの際には、患者さまの生活背景を詳しく伺います。「遠くが見えるようにしたいのか、近くを優先したいのか」「家にいることが多いのか、外出が多いのか」など、さまざまな角度から質問します。こうして得た情報をもとに、患者さまに合ったレンズをご提案することで「すごくよく見えるようになった！」と喜んでくださる方が多くいらっしゃいます。
居心地の良さと技術の組み合わせによる治療効果
──お仕事のやりがいは、どういった部分にありますか？
視能訓練士が最も力を発揮できるのは、小児眼科だと個人的には思っています。特に斜視や弱視の治療は年単位で続くものなので、お子さんご本人だけでなくご家族とも長期的に関わっていくことになります。
そのなかで、弱視だったお子さんの視力が回復して「この子が、この先の人生を何の制限もなく歩んでいける」と思えたとき、視能訓練士としてこの上ない喜びを感じます。ご家族と一緒にその瞬間を分かち合えることにも大きなやりがいを感じます。
──最後に、読者へのメッセージをお願いします。
日常のちょっとしたお困りごとが、検査や病気の早期発見につながることもあるので、世間話も含めて何でも気軽にお話しいただけるとうれしいです。
──取材中、今井先生は落ち着いた語り口で、一つひとつの質問に丁寧かつ的確に答えてくださいました。その言葉の端々からは、「遠方の病院まで行かなくても、完結して治療を受けられる場所でありたい」という強い信念が伝わってきます。
視能訓練士の伊藤さんは、柔らかな笑顔と明るい雰囲気が印象的で、検査のプロとしての誇りと患者さまに寄り添う姿勢が感じられました。地域に根ざした温かさをあわせ持つ今井眼科医院は、これからも多くの人の視力と暮らしを守り続けていくことでしょう。
（取材：メディコレ編集部）
提供：クーパービジョン・ジャパン株式会社
