目の症状に関しては歯医者や内科などと違い、初期症状に気づかず、気づいたときには病気が進行しているケースもあります。目に違和感があっても放置してしまうと、徐々に視力や視野の低下を引き起こす可能性もあるため注意が必要です。
そこで、目の病気を早期発見するために重要なのが眼科検診です。今回は斜視、弱視など外眼の手術実績が豊富な笠井眼科院長の笠井龍一郎先生に、眼科検診に関するよくある疑問に対しての見解をいただきました。
お話を聞いたのは
大きな問題がないことを確認するために検査を受ける
――本日は眼科検診での診断結果や、検査の重要性について見解をお聞かせいただければと思います。
わかりました。よろしくお願いいたします。
――健康診断（人間ドック）の眼科項目で引っかかってしまった場合、特に症状がなければ放置しても平気でしょうか？
健康診断で異常値が出た場合、問題ないとは言い切れませんので、念のため眼科で詳細な検査をしてもらったほうが良いかと思います。病気を見つけるだけでなく、大きな問題がないことを確認して安心するために、眼科での検査を受けるという捉え方をされても良いかもしれません。
――視力低下で引っかかった場合、どのような病気が隠れていると考えられますか？
視力低下に関連する病気としては、白内障の可能性が考えられます。
一方で、メガネやコンタクトレンズが合っていないなどの矯正不良が原因で引っかかることも考えられます。他には、目の表面がドライアイなどで傷つき、視力が出にくいケースもあるのではないでしょうか。
――仮に、視力の低下が原因で引き起こされる重い病気は何が考えられますか？
可能性は低いですが、網膜剥離や脳の病気が考えられます。
網膜剥離は、目のなかのどこまで剥がれているかどうかで予後が変わる病気です。眼球の中心部分まで剥がれてしまっている場合、視力が大きく低下します。具体的には、視力が1.0から0.1ぐらいまで下がることもあるため、網膜剝離の疑いがある場合は早急に眼科を受診された方が良いかと思います。
検査によって目の病気が発覚することもある
――眼圧で引っかかった場合、どのような病気が隠れていると考えられますか？
眼圧が高い場合は、緑内障の可能性が考えられます。眼圧が高いときは高眼圧症という状態なのですが、原因は多々あります。具体的には、生まれつき眼圧が高いケースや、他の病気でお薬を飲んでいることで数値が高くなっているケースです。さまざまな原因があるなかで、最終的には緑内障の可能性が考えられます。
ただし、眼圧が高い場合、必ず何かしらの病気を抱えているわけではありません。例として、血圧と出血の関連性に例えるとわかりやすいのではないでしょうか。一般的には、血圧が高いと脳出血を起こしやすくなります。同様に眼圧が高いと、緑内障になりやすいイメージです。
――中間透光体混濁で要受診となった場合、どのような病気が隠れていると考えられますか？
頻度的に多いのは白内障です。その他には、硝子体における網膜が出血している可能性も否定できません。
最低でも年に一回は受診した方が良い
――眼科検診では、どのようなことがわかるのでしょうか？
わかりやすいところでは、視力と眼圧です。視力であれば、皆さんがよくご存じのとおり、目を通して物体をはっきりと見分けられるかどうか数値化できます。
眼圧に関しては、OCTという機械を利用して、神経の厚さを測ることが可能です。検査を行い、目の中心部の構造に異常があればすぐに発見できます。
――目の検診はどのくらいの頻度で行うのが良いのでしょうか？
目の違和感や何かしらの病気を抱えている方は、検査を受けている眼科の指示に従い、定期的に受診した方がいいでしょう。仮に、現時点では全く問題がないと感じる方でも、家族性緑内障を発症する可能性があります。そのため、ご家族に目の病気を抱えている方がいる場合は、最低でも年に一回は受診された方が良いのではないでしょうか。
自分が病気を抱えているのか不安だったり、小さくても何かしら目に関する違和感があったりする場合は、頻度を気にせず都度眼科の受診をおすすめします。
――自分では自覚できない症状とかもありそうですよね。
おっしゃるとおりです。例えば緑内障などは、気がついたときにはかなり症状が進行していることもあります。
私は、このようなケースを落とし穴に例えてお伝えしています。歩いていて落とし穴に落ちた場合、自分がそこで落ちるまで落とし穴があることに気づきませんよね。落とし穴に落ちた瞬間に、そこから落ちないようにすることはできません。病気も一緒で、症状が進行してしまったらそこから治すのは難しい場合もあります。
緑内障は、神経のダメージによって起きる病気です。そのため、症状が進行してしまったら基本的にはもとに戻りません。
不安を煽りたいわけではなく、気づいたときには症状が進行していたとならないように、無自覚であっても定期的に眼科検診を受けられた方が無難だと考えています。
わかりやすい説明と待ち時間への配慮
――笠井眼科の特徴を教えてください。
近隣の病院と連携を行っている点が特徴です。もともと、私が草加市立病院に20年近く勤めていたこともあり、手術が必要な方などは病院を紹介することもあります。
――先生の専門領域を教えてください。
私が入った医局では斜視、弱視と外眼をメインにしていたこともあり、このあたりの外来は経験が豊富です。草加市立病院以外にも、複数の病院で外眼の手術を担当していたので、斜視や弱視に関しては診療している人数も多いのではないでしょうか。
――診察時に何か意識されていることはありますか？
できるだけ聞かれたことは、わかるように説明したいと考えています。あとは、なるべく待ち時間を短くできるように意識しています。何かしらの不安があるから病院へきているのに、待ち時間が長いと嫌になってしまうからです。
――来院を検討されている方に対してメッセージをお願いします。
仮に現在は異常がなくても、ご家族で内科系の疾患や緑内障の方がいると、遺伝の問題で先々は病気を発症する可能性があると言われています。目の病気に関しては、はっきりと自覚症状がないことも多いです。そのため、何かしらの違和感がある方はもちろんのこと、ご家族が目の病気を抱えている方などは、定期的に眼科の受診を検討されてみてください。
（取材後記）
――インタビューを通じて、笠井先生はこちらの質問に対して例え話を交えながら、わかりやすく解説してくださった印象が残っています。「できるだけ聞かれたことは、わかるように説明したい」との言葉どおり、患者様相手でも不安にさせないよう意識しながら話をされている様子が伺えました。
（取材：メディコレ編集部）
提供：クーパービジョン・ジャパン株式会社
