仕事中はパソコン、通勤中や帰宅後はスマホで動画やSNS──。もはや現代の生活において、PCやスマートフォンは欠かせない存在となりました。その一方で、「目の疲れ」「肩こり」「頭痛」といった眼精疲労の症状に悩む人も急増しています。
今回は、いち早く眼精疲労外来を立ち上げ、医療とリラクゼーションの両面から“現代人の目の悩み”に寄り添ってきた【かとう眼科】の加藤利博院長に、眼精疲労の本質とその対策について詳しくお話を伺いました。
お話を聞いたのは
「眼精疲労」は、ただの眼の疲れではない。

――本日は多くの方々が悩んでいる「眼精疲労」をテーマに、先生に原因や対処方法などのアドバイスをいただければと思っています。よろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。
――仕事でパソコンを使っているせいか夕方になると眼が疲れてしまいます。どうしたら良いですか?
目には毛様体筋という筋肉があり、縮んだり伸びたりしてピントを合わせています。パソコンで長い時間作業をしていると、毛様体筋がずっと収縮し緊張状態になります。夕方に眼が疲れてくるのは、この筋肉に負担をかける時間が長いのが原因なのです。
対策としては、まず毛様体筋の緊張をほぐすということが大切です。
――「眼精疲労」というと私たちは単純に「眼が疲れている」というイメージですが、どのような状態を言うのでしょうか?
眼精疲労の一般的な定義としては、ひと晩寝て休んでも眼の疲れが取れない状態を指します。毛様体筋の緊張が長時間続くことが大きな要因とされています。
毛様体筋は痛みを感じるための三叉神経の支配を受けていますので、この筋肉が長く緊張した状態が続くと、目の奥の痛みや頭痛など、三叉神経に関係する不調が出てくることがあります。また自律神経の支配も受けていますので、自律神経のバランスが崩れることで、めまいや吐き気といった全身の不調にもつながります。
「よく見える」より「ラクに見える」──現代人のための眼鏡選び

――眼精疲労の対策として眼鏡をつくる時に注意することはありますか?
眼精疲労が起きているときは、毛様体筋が常に緊張した状態にあり、正確な視力やピントの状態を測ることが難しくなっています。
本来の目の状態を正しく知るためには、毛様体筋の緊張をいったんほぐすことが必要です。
当院の眼精疲労外来では、毛様体筋をリラックスさせる点眼薬を使ったうえで視力検査を行い、その方に合ったレンズやケアの提案をしています。
眼鏡は「視力を上げるためのもの」ではなく、“楽に見る”ための道具として捉えていただきたいですね。
――眼精疲労専門外来をはじめられたきっかけは何でしょうか?
当院が眼精疲労専門外来を立ち上げたのは、今から約19年前になります。当時、パソコンの普及とともに「目の疲れ」を訴える患者さんが急増し、これまでの一般診療とは異なる、専門的な治療やケアが必要だと感じたのがきっかけです。
併設のケア施設「アイクリーク」では、目のまわりのマッサージや「スーパーライザー(近赤外線機器)」による自律神経の調整など、心身のリラックスと回復を目的としたケアを提供しています。
――眼精疲労になってしまった場合、どのような対策をとればいいですか?
パソコン用と普段用の眼鏡を使い分けるだけでも、目の負担を大きく減らすことができます。また、「疲れたな」と感じたら無理をせず、こまめに目を休めることも重要です。目のまわりをホットタオルや専用のアイマスクなどで温めると、筋肉の緊張がやわらいで、目の疲れがぐっと軽くなります。
また疲れ目の回復には、質のよい睡眠も欠かせません。夜寝る前に、毛様体筋の緊張をやわらげる点眼薬を眼科で処方してもらうのもひとつの方法です。
医療×ケアでアプローチ──“心身を整える眼科医療”へ

――眼精疲労はどうやったら予防できますか。
予防の第一歩は、「視力=よい・悪い」という固定観念を手放すことだと思います。多くの方は、視力1.5と聞くと“目がいい”という印象を持ちますが、この数値は「遠くがよく見える」という状態を表しているに過ぎません。この「遠くにピントが合いやすい目」は、近くを見るときに毛様体筋に強い負荷がかかりやすいんです。
現代はパソコンやスマホなど、近くを見続ける生活が中心。こうした日常においては、むしろ適度に近視の方が“近くがラクに見える”というケースもあります。長時間パソコンを使う人や細かい作業をする人は、その作業距離に合わせた眼鏡の使い分けを検討することがとても重要です。
――”夕方老眼”と聞くことがありますがどういう状態で、どう対策したら良いですか?
いわゆる「夕方老眼」とは、朝は見えていた近くの文字が、夕方になると見えづらくなる状態のこと。長時間パソコンやスマホを見続けていると、ピントを調節する毛様体筋が疲れてうまく働かなくなり、ピントが合いづらくなります。スマホ老眼も同じような仕組みですね。
夕方老眼は、眼精疲労の軽い状態の可能性があります。眼からの黄色信号のサインですね。本格的な眼精疲労につながることもあるため、早めに眼科で相談し自分に合った眼鏡を使い分けることから始めましょう。
一期一会を大切に、目と心”に寄り添う診療スタイル

――かとう眼科の特徴について教えてください。
当院では白内障の日帰り手術を再開しました。私自身、白内障の手術に20年以上携わってきた経験があり、現在は息子が執刀し、チームとして取り組んでいます。また当院の大きな特徴は「眼精疲労専門外来」です。 医療とケアを組み合わせて、患者さんの眼だけでなく心身のリラックスもサポートしています。
――先生の専門領域や注力されているポイントを教えていただけますか。
早くから眼精疲労の専門治療に注力してきました。診療に加え、スーパーライザー(近赤外線治療器)を用いた治療やリラクゼーションを行い、目と心身の両面にアプローチしています。視神経の血流改善効果が期待でき、緑内障や眼底疾患の患者さんにも活用いただいています。
――最後に、患者さんへメッセージをお願いします。

当院は平成9年に、大倉山で開業して以来28年になります。開業当時は小さなお子さんだった患者さんが、今では親となり、お子さんを連れて来てくださることもあります。そんな“世代を越えたご縁”が本当に嬉しいです。
診療の際に心掛けているのは、患者さんが何を感じて、何を求めて来院されたのかをしっかり把握し、対応すること。診察室には「一期一会」という書を飾っています。出会いを大切にし、皆さんの目と心に寄り添う存在であり続けたいですね。
■まとめ(取材・編集後記)
「みなさんに視力の概念を、変えていただきたいと思っています。視力は“優劣”ではなく、“状態”を表す数字なんです」という加藤先生の言葉が、印象に残っています。一期一会を大切にしている加藤先生の診療時間は、患者さんと話がはずみついつい長くなってしまうそうです。疲れ目や眼精疲労で悩むすべての人にとって、かとう眼科は“正しくラクに見る”ことを応援してくれる心強い味方です。
(取材:メディコレ編集部)
提供:クーパービジョン・ジャパン株式会社
