いまや視力の矯正だけでなく、ファッションや美容の一部としても私たちの日常に浸透しているコンタクトレンズ。いつでもどこでも気軽に買えるようになった反面、誤った使い方や安易な購入によって、目の健康に深刻なトラブルを招くケースも少なくありません。
今回は、約40年にわたり地域の目の健康を支え、特にコンタクト診療に力を入れてこられた北海道・岩見沢市「医療法人社団 竹内眼科医院」の竹内勉先生にお話を伺いました。
お話を聞いたのは
そのコンタクト、本当にあなたの目に合っていますか?

──本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。コンタクトレンズの正しい管理方法をはじめ、さまざまな視点からお話を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
こちらこそ、よろしくお願いします。
──まず、コンタクトレンズに関してよく耳にするのが「レンズを新しいものに変えた直後に目が充血してしまった」というお悩みです。その原因としては何が考えられますか?
「コンタクトレンズが自分の目に合っていない」というのが主な原因ですね。
一番多いのは、フィッティングがきつすぎる場合です。ちょっとタイトな装用感というか。そうすると角膜に負担がかかって、充血しやすくなります。あとは、コンタクトの素材に対してアレルギーが出る方もいらっしゃいます。
──では、どのようにして「自分に合う」コンタクトを選べばよいのでしょうか?
ご自身の装用感もひとつの指標にはなりますが、それだけで判断するのは避けていただきたいところです。
眼科では、テストレンズを装着して、実際に黒目の上での動きやフィット感を確認しながら、その人に適したコンタクトレンズを選んでいます。あわせて視力の検査も行い、総合的に「その人の目に合っているか」を丁寧に見極めています。
──最近だと、眼科に行かずに自分で購入する方も多いと聞きます。
そう、それが危ないんですよね。なんとなく「これでいいや」と決めてしまう人も多いけれど、それでは本当に自分の目に合っているかはわかりません。
最近はどこでも気軽にコンタクトが買える時代ですが、最初のフィッティングを眼科でしっかり確認しておかないと、あとでトラブルを引き起こす原因になります。
大切な目を守るために見直したいNG習慣とは

──コンタクトレンズの正しい使い方や管理方法についてもぜひ教えてください。
まず基本として、装用時間を守ること。これを徹底していただきたいです。「つけたまま寝てしまう」というのも、やってはいけないことですね。あとは、毎日の消毒や洗浄といったケアもきちんと行わないと、あとで“痛い目”に遭うことになります。
──“痛い目”というと、具体的にはどのような症状なのでしょうか。
代表的なのは、角膜びらんや結膜炎、あとは角膜潰瘍ですね。
これらは自覚症状が急に出るので、本人も驚くことが多いんです。昨日までは平気だったのに、朝起きたら目が開かないほど充血していた、なんてこともあります。
──コンタクトの度数が目に合っていない場合は、どのようなリスクがありますか?
近視が進んでるのに、以前と同じ度数のまま使い続けていたり、適当にネットで買ったレンズを使っていたりすると、目に余計な負担がかかって、眼精疲労の原因になったり、近視が進行することがあります。
当然のことではありますが、添付文書に記載されたケア方法をきちんと守って使うことが大切ですね。
逆に言えば、コンタクトレンズを正しく管理して使うことで、目の健康は守られます。私たちも、患者さんにはそのための指導を丁寧に行って、安心して使っていただけるように努めています。
「安い」「手軽」の裏に潜む落とし穴

──最近はさまざまなところで気軽にコンタクトレンズを買うことができるようになっていますが、その点についてはいかがでしょうか?
SNSやインターネットでどんどん宣伝されていて、より気軽に購入できるようにはなっています。しかし、実際にそのレンズがどのような品質なのか、自分の目に合っているのかはまったく分からないわけです。
近視矯正や屈折矯正などが目的であれば、そういった製品は購入しない傾向はあると思いますが、美容目的となると特に気にせず使用してしまう方が多いんです。価格は安いかもしれないですが、耐用年数が短かったり、装用中にトラブルが起きたりと、その裏には少なからずリスクが潜んでいます。
──安く手に入ったとしても、結果的に高くついてしまう可能性がありますね。
本当にその通りです。高くつくどころか、目が見えなくなってしまう可能性もはらんでいます。
最悪の場合、角膜に傷がついて、アカントアメーバ角膜炎という感染症になることもあります。これは失明にもつながりかねない病気で、角膜が濁ってしまい、角膜移植が必要になるケースもあるんです。
消費者個人の意識や管理の問題でもありますが、それだけでは済まされないはずです。長年、目の健康と向き合ってきた立場としては、昨今の「売りっぱなし」の状況に強い危機感を抱いています。
一人ひとりの「見える」に寄り添い続ける

──最後に、竹内眼科医院、ひいては竹内先生ご自身の「強み」についてもお伺いできればと思います。
診療の合間を縫ってできる限り学会にも参加して、常に最新の知見を得ながら、患者さんへ情報を提供できるように努めています。
──コンタクトに関するご相談は、やはり多いですか?
多いですね。特に最近は低年齢の子どもたちがコンタクトを希望して来るケースが増えてきました。小学6年生の親子が「クラブ活動でメガネが邪魔になることがある」と相談に来ることもあります。
年齢的にまだ早いかなという気持ちもありますが、「十分注意してね」とお伝えしたうえで、比較的管理のしやすいワンデータイプを提供しています。今の子たちは、スマホやタブレットによる近用作業の影響で、かなり早くから近視が進んでいますからね。
──そんな日々の診療の中で、やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
コンタクトに限らず、「見えるようになった」と喜ばれる瞬間は、やっぱりうれしいですね。
白内障の手術を終えた患者さんが、次の診察の際に「見えるようになりました」とニコニコしながら来てくださると、もう本当にうれしいんです。目が見えるようになることが一番ですよね。
──最後に、来院を検討されている方にメッセージをお願いします。

当院は、コンタクトレンズ診療に特に力を入れていて、年齢が若い方の相談にも柔軟に対応しています。使い方や選び方なども含めて、しっかりと丁寧にご説明しますので、まずはお気軽にご相談いただければと思います。
──取材中、竹内先生は終始落ち着いた語り口で、穏やかにお話しされていたのが印象的でした。コンタクトレンズを使うすべての人が、正しい知識とケアのもとで安心して日常を送れるように。岩見沢の地で、長年にわたって幅広い世代の「見える」を支えてきた眼科医ならではの責任感と誠実さがにじみ出ていました。
(取材:メディコレ編集部)
提供:クーパービジョン・ジャパン株式会社
