【医師監修】妊娠中の甲状腺管理はどう変わった?最新の方針と甲状腺管理について医師が徹底解説!

2026/05/22更新

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妊娠中の体の変化の中でも、見落とされがちでありながら非常に重要なのが「甲状腺ホルモン」です。実はこのホルモンは、赤ちゃんの発育、特に脳の成長に深く関わっています。 一方で、「TSHは2.5未満にすべき」といった情報に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。近年、この考え方は見直され、より個々のリスクに応じた管理が重視されるようになっています。 本記事では、甲状腺ホルモンと妊娠の関係を基礎からわかりやすく解説し、最新の学会方針に基づいた適切なTSH管理の考え方について、専門医の視点から丁寧に解説していきます。

この記事の監修者

  • 蛭間 重典

    蛭間 重典

    ひるま甲状腺クリニック蒲田 院長

    <資格>
    医学博士
    日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医
    日本甲状腺学会評議員
    総合内科専門医・内科認定医
    老年病専門医・老年病指導医
    日本抗加齢医学会認定 抗加齢医学専門医
    母性内科診療プロバイダー
    難病指定医
    日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医
    <経歴>
    2009年3月 立教池袋高等学校卒業
    2015年3月 東邦大学医学部卒業
    2015年4月 国立国際医療研究センター国府台病院臨床研修
    2017年4月 東邦大学医療センター大森病院入局
    2022年4月 伊藤病院(甲状腺専門)
    2024年4月 東邦大学医療センター大森病院院内助教
    2025年4月 ひるま甲状腺クリニック蒲田院長

    クリニック公式HP(ひるま甲状腺クリニック): https://hiruma-thyroid.com/

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甲状腺と妊娠の関係

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そもそも、甲状腺ホルモンは妊娠や胎児の発育とどのような関係があるのでしょうか?


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甲状腺ホルモンは、胎児の発育、特に脳の発達に非常に重要な役割を担っています。

特に妊娠初期は胎児自身が甲状腺ホルモンをほとんど作れないため、母体の甲状腺ホルモンに大きく依存しています。ホルモンが不足でも過剰でも母体・胎児への影響が生じる可能性があり、妊娠中の甲状腺管理は非常に重要とされています。



甲状腺イメージ

妊娠に影響を与える甲状腺疾患について

~甲状腺機能低下症~

・妊娠しにくくなる(排卵障害やホルモンバランスの乱れ)

・流産・早産のリスクが上がる

・胎児の発育に影響(特に脳や神経の発達に影響する可能性)


~甲状腺機能亢進症~

・流産・早産、妊娠高血圧症候群のリスクが上昇

・バセドウ病においては、母親から分泌される自己抗体や内服中の抗甲状腺薬が胎盤を通って胎児に影響を及ぼすことがある(胎児の甲状腺機能異常の可能性)



甲状腺ホルモン管理の学会の方針



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妊娠中の甲状腺ホルモン管理について、最近方針が変わったという話を聞きますがこれは本当でしょうか?


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はい、2025年の暮れに日本甲状腺学会から妊娠中の甲状腺管理についての手引きが公開され、方針が整理されました。



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そうなのですね。まず前提として、甲状腺診療でよく聞く“TSH”とは何か、教えていただけますか?


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TSHは“甲状腺刺激ホルモン”といって、脳の下垂体から分泌されるホルモンです。甲状腺に対して“ホルモンを作りなさい”と指令を出す役割があります。


TSH(甲状腺刺激ホルモン)の状態について

~TSHが高い場合~

甲状腺ホルモンが不足していて、体が“ホルモンが足りないからもっと出してほしい”と強く指令を出している状態です。

~TSHが低い場合~

甲状腺ホルモンが過剰な状態です。すでにホルモンが十分あるため、“これ以上の産生は不要”とブレーキがかかっています。


つまりTSHは甲状腺ホルモンそのものではなく、間接的な指標という点が非常に重要です。



チェックリスト

なぜ妊娠中にTSHが重要なのか

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なぜ妊娠中にTSHの値が重要なのでしょうか?


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妊娠初期は胎児が自分で甲状腺ホルモンを作れないため、母体のホルモンに依存しています。そのため、ホルモン不足は発達への影響、ホルモン過剰は母体・胎児への影響が問題になります。そして、甲状腺ホルモンの過不足を鋭敏に指標するのがTSHなのです。


なぜ「TSH 2.5未満」が広まったのか

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TSH 2.5未満という基準はどこから来たのでしょうか?


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2017年に発表されたAmerican Thyroid Associationのガイドラインがきっかけです。これを受けて、日本でも妊娠中はTSH 2.5未満という考え方が広く浸透しました。


日本で起きた問題

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それによって問題もあったのでしょうか?


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はい。本来は日本人のデータを集めて検証する必要がありましたが、先に産婦人科や一般内科の先生方に広まった、TSH2.5未満が良いという情報が固定化された結果として、TSH 4.0程度まで許容する比較研究の実施が難しくなってしまいました。



今回の手引きの意義

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その中で今回の手引きが出てきたのですね。


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その通りです。約10年にわたり検討が行われ、特に国立成育医療研究センターの荒田尚子先生らの尽力により、日本人データに基づいた実臨床向けの手引きが作られたことになります。



現在のTSH管理

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では結局、最新のTSH目標はどのように考えればよいのでしょうか?


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ポイントはリスク別です。 ”全員がTSH 2.5未満”ではなく、必要な人だけ厳格に管理する事が重要です。


TSHの目安をわかりやすく整理

TSHの値は「低すぎても高すぎても良くない」バランス指標です。

低すぎる → ホルモンが多い(過剰)

適正 → バランスが取れている

高すぎる → ホルモンが少ない(不足)

今回のポイントは、この「適正」の範囲が一律ではなく、個々のリスクによって異なるという点です。


リスク別に応じたTSHの管理

① 流産歴がある方→ TSH < 2.5

② 初妊婦・流産歴のない経産婦→ TSH < 4.0


甲状腺で悩む女性

まとめ


妊娠を希望されている方や妊娠中の方にとって、甲状腺ホルモンは胎児の発育、特に脳の発達に深く関わる重要な要素です。そのため、ご自身の状態を正しく把握するためにも、必要に応じて甲状腺機能のチェックを受けることが大切です。

ただし現在は、「TSHは必ず2.5未満でなければならない」という一律の基準ではなく、流産歴の有無や既往歴などを踏まえたリスク評価に基づき、適切な範囲を個別に判断するという考え方が主流となっています。

過度に数値にとらわれてしまうと、かえって不必要な治療につながる可能性もあるため、「必要な方に、適切な範囲で管理する」というバランスが非常に重要です。

ひるま甲状腺クリニックでは、妊娠を希望される方や妊娠中の方の甲状腺管理を専門的に行っています。安心して妊娠・出産を迎えるために、気になることがおありの方はお気軽にご受診ください。


ひるま甲状腺クリニック 蒲田(東京都大田区蒲田駅)

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