XLHは、およそ2万人にひとりの割合で発症するとされる希少疾患。体内のリン濃度を調節するFGF23(線維芽細胞増殖因子23)というホルモンの作用過剰によってリンが不足することで骨を硬くできなくなり、骨の変形や痛みが現れる病気です。
患者数が少ないため、疾患に関する正確な情報を得る機会や患者同士で交流できる場が限られているのが課題となっていました。本イベントは、その課題を解消することを目的として2022年より毎年開催されています。
5回目の開催となる今回は、東京・大阪・名古屋・岡山の4会場とオンライン配信のハイブリッド方式にて実施されました。各会場は映像や音声が双方向通信で繋がれており、講演や発言内容が全会場で共有される仕組み。筆者は、そのうちの東京会場に足を運びました。
患者さんが生の声で経験を語る
イベントでは、まず大阪公立大学大学院医学研究科の今西康雄先生による挨拶が行われたあと、名古屋会場から中継でXLHの患者さんが出演。自身が疾患や治療と向き合ってきた経験を生の声で語りました。
これまで8回に及ぶ手術を受けてきたというその患者さんは、幼少期に足の矯正のためギプスをして寝なければならなかったことや、友達と一緒に歩きながら足が痛くて涙が出る思いをしたことなどを話しました。また20歳で手術をした際は、「このまま人生が大きく変わる」と思い、今できることを一生懸命やるようになったそうです。
合併症で手術した際は社会復帰できるかどうか分からず将来への不安も大きかったと言いますが、前向きに治療に取り組んできた結果、生活に支障がない状態にまで改善。現在は結婚して二児の父親となり、大好きなお酒を仲間と楽しんだりする日々を送っているとのことです。
XLH Caféには前回から参加しているそうですが、さまざまな専門医の話を聞くことができて疾患や治療について総合的に把握できること、同じ立場の方と交流できることがありがたかったと言います。
会場では、その言葉に頷きながら熱心に耳を傾ける参加者の姿が見られました。
専門医による講演でXLHの知識を深める
続いてイベントでは、東京都立小児総合医療センターの長谷川行洋先生をはじめとする専門医による講演とQ&Aが行われました。講演では、XLHの基本的な知識や骨粗しょう症との違い、体内のリンが不足する原因、リン濃度を適正に保ち骨を健康に維持するための治療方法などが解説されました。
またXLHの場合、骨の変形や痛みなどの疾患そのものの症状に加え、治療に伴う合併症のリスクも存在します。具体的には、体内のリン不足を補うための飲み薬や、その体内吸収を助けるビタミンD製剤を投与することで、腎石灰化や尿路結石、慢性腎臓病などに進展する場合があります。講演では、こうした合併症リスクや、それを回避するために大切なことなどが紹介されました。
このほかにも、XLHで起こりやすい歯のトラブルやその原因についてもレクチャーが行われ、毎日の適切なセルフケアや歯科医院での定期検診による早期発見・早期治療の重要性が説明されました。
講演終了後には参加者の疑問や悩みに専門医が答えるQ&Aが実施されたあと、STEPおよびXLH患者・家族会の共催により、参加者同士が軽食を交えながら気軽に情報交換を行う茶話会も催されました。
参加した患者さんのひとりで、今年の7月に設立されたXLH患者・家族会の代表を務める田上さんは、「協和キリンさんとASridさんのプレスリリースでXLH Caféのことを知り、その開催趣旨に感動して初回から参加しています。
栄養、日光浴不足による、くる病・骨軟化症と混同されがちですが、XLHは特定の遺伝子の変異によって起こるもの。専門医は限られていて、患者に至っては本当に情報がない状況です。
専門医の方が一堂に会して、これだけ詳しくお話をしてくださる機会はとても貴重。今回は患者さんのおひとりが勇気を持って生の声を届けてくださったのも大きかったですね。
イベントにはさまざまな背景の方が参加されており、当事者やご家族の切実な悩みに改めて気付かされました」と語りました。
協和キリンの取り組みとXLH Caféへの想い
本イベントの共催である協和キリン株式会社 コーポレートコミュニケーション部ペイシェントアドボカシーグループ マネージャーの中村陽介さんにXLH Caféを立ち上げた理由について聞いたところ、「希少疾患であるXLHの患者さんは、他の患者さんと出会う機会がほとんどありません。医薬品だけでは解決できない患者さんの課題はまだまだたくさんあるのだろうな、それに向き合うため何かできないかと考えたのが最初のきっかけでした」とのこと。
2022年の第1回はオンラインのみの開催でしたが、患者さん同士が集まって対面で気軽に話ができる場を設けたいということで、2回目以降はリアル会場とオンラインのハイブリッド方式に。年を追うごとに参加者が増え、前回は64家族、約100名の参加があったそうです。
患者さんと社内のさまざまな部署をつなぐハブのような立場で声を届け、患者さんにLife-changingな価値を提供したいと活動を続けてきたとのこと。名称をCaféとしたのも、できるだけアットホームな雰囲気のなかフラットに話ができるようにという想いからだと言います。
中村さんは「イベントで扱う内容は患者さんやそのご家族へのアンケートなどを行い、毎回プログラム構成やテーマを変えています。今回は患者さんに生の声で経験を語っていただいたことが初めての試みでした。またプログラムのうち茶話会については、今回より患者・家族会がSTEPとの共催で開催しています。今後も患者・家族会とご相談しながら、よりよい形で価値を提供していきたいと思います。そして、この疾患に限らずお困りごとのある方をみんなが気にかけ、お互いをサポートし合えるような世の中に繋げていけたら嬉しいですね」と語ってくれました。
