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肥満症とは
肥満症とは、肥満に健康障害が伴っている、あるいは今後伴うことが予測され、医学的に減量が必要と判断される「疾患」です。見た目や体型の問題ではなく、医療機関で診断・治療を受ける対象として扱われます。
肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態
肥満は、脂肪組織に脂肪が過剰にたまった状態を指します。日本ではBMI(体格指数)が25以上の場合に肥満と判定します。
大切なのは、肥満の本質が「体重が重いこと」ではなく「体脂肪が多いこと」にある点です。BMIは身長と体重から体脂肪の多さを簡便に推定する指標で、筋肉量が多い人ではBMIが高くても体脂肪はそれほど多くないことがあります。
なお、世界保健機関(WHO)の基準ではBMI30以上を肥満としていますが、日本人はそれより低いBMIでも糖尿病などの健康障害が起こりやすいため、日本ではBMI25以上を肥満と判定しています。肥満症は医学的な減量が必要な疾患
日本肥満学会の「肥満症診療ガイドライン2022」では、肥満症を「肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するか、その合併が予測され、医学的に減量を必要とする疾患」と定義しています。
つまり肥満症は、減量によって健康障害の改善や予防が見込める状態です。治療の目的は体重を落とすことそのものではなく、血糖や血圧、脂質などの異常を改善し、将来の心筋梗塞や脳梗塞といった病気を防ぐことにあります。そのため、診断がつけば保険診療で治療を受けられます。
肥満と肥満症の違い
肥満と肥満症を分けるのは、肥満に関連する健康障害があるか、または内臓脂肪の蓄積によって健康障害が起こると予測されるかどうかです。
BMIだけでは肥満症と診断されない
BMI25以上という条件は、肥満と判定するための入り口にすぎません。同じBMI28の人でも、健康診断の数値に異常がなければ「肥満」、高血圧や脂質異常症を合併していれば「肥満症」と、判断が分かれます。
体重や体格だけで治療が必要かどうかは決まらず、BMIに加えて健康障害の有無や脂肪のつき方をあわせて評価するのが肥満症の考え方です。
健康障害や内臓脂肪の蓄積も確認する
肥満症の診断では、肥満に関連する健康障害を合併しているかどうかに加え、内臓脂肪型肥満かどうかを確認します。
体脂肪には、皮膚のすぐ下につく皮下脂肪と、おなかの中の腸のまわりなどにつく内臓脂肪があります。内臓脂肪がたまると、脂肪細胞から分泌される物質のバランスが崩れ、インスリンの働きが悪くなったり血圧が上がったりしやすくなります。そのため、現時点で健康障害がなくても、内臓脂肪が多い場合は将来の合併が予測されるとして肥満症と診断されます。
肥満症の診断基準
肥満症は、BMI25以上の肥満であり、次の2つのいずれかに当てはまる場合に診断されます。
- 肥満に起因ないし関連する11の健康障害のうち、1つ以上を合併している
- 健康障害を合併していなくても、内臓脂肪型肥満と判定される
BMIの計算方法と日本の肥満判定
BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算します。たとえば身長170cm、体重75kgの人であれば、75÷1.7÷1.7で約26.0となり、肥満(1度)に該当します。
日本肥満学会の肥満度分類は次のとおりです。
| BMI(kg/m²) | 判定 |
|---|---|
| 18.5未満 | 低体重 |
| 18.5以上25未満 | 普通体重 |
| 25以上30未満 | 肥満(1度) |
| 30以上35未満 | 肥満(2度) |
| 35以上40未満 | 肥満(3度) |
| 40以上 | 肥満(4度) |
BMI35以上は「高度肥満」と呼ばれます。高度肥満で肥満症の条件を満たす場合は「高度肥満症」として区別され、心不全や静脈血栓症など注意すべき合併症が多いことから、より積極的な治療が検討されます。
また、もっとも病気になりにくいとされるBMI22を基準にした体重を「標準体重」といい、「身長(m)×身長(m)×22」で求めます。身長170cmであれば約63.6kgです。
肥満に関連する健康障害
肥満症の診断に用いる健康障害は、次の11項目です。BMI25以上で、このうち1つ以上を合併していれば肥満症と診断されます。
- 耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など)
- 脂質異常症
- 高血圧
- 高尿酸血症・痛風
- 冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)
- 脳梗塞・一過性脳虚血発作
- 非アルコール性脂肪性肝疾患
- 月経異常・女性不妊
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 運動器疾患(変形性関節症、変形性脊椎症など)
- 肥満関連腎臓病
このうち「非アルコール性脂肪性肝疾患」は、現行の肥満症診療ガイドラインの診断基準で用いられている名称です。脂肪肝の病名は国際的に見直しが進んでおり、国内でも2024年に日本消化器病学会と日本肝臓学会が「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」という新しい名称を公表しています。
内臓脂肪型肥満の評価
内臓脂肪型肥満は、まずウエスト周囲長(おへその高さで測る腹囲)で目安をつけます。男性85cm以上、女性90cm以上の場合は内臓脂肪の蓄積が疑われます。この値は、内臓脂肪面積100cm²に相当する数値として設定されています。
確定には、おへその高さの腹部CT検査で内臓脂肪面積を測定し、100cm²以上であれば内臓脂肪型肥満と判定します。BMI25以上でこの基準を満たす場合は、11の健康障害を合併していなくても肥満症と診断されます。
肥満症に関連する主な健康障害
肥満によって起こる健康障害は、血糖や血圧といった代謝の異常にとどまらず、肝臓、呼吸、関節、生殖機能、腎臓など全身に及びます。
糖尿病・高血圧・脂質異常症
内臓脂肪が増えると、血糖を下げるインスリンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、血糖値が上がりやすくなります。あわせて、血圧の上昇や、中性脂肪の増加、HDL(善玉)コレステロールの低下も起こりやすくなります。
これらの異常は一つひとつが軽くても、重なることで動脈硬化を進め、心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳梗塞のリスクを高めます。血液中の尿酸値が上がる高尿酸血症や痛風も、肥満と関連が深い病気です。
脂肪肝・睡眠時無呼吸・運動器疾患
肝臓に脂肪がたまる脂肪肝は、多くは自覚症状がありませんが、一部は肝炎へと進み、肝硬変や肝がんにつながることがあります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、首まわりやのどに脂肪がつくことで睡眠中に気道が狭くなり、呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。いびきや日中の強い眠気のほか、高血圧などの原因にもなります。高度肥満では、呼吸が十分にできず血液中の二酸化炭素が増える肥満低換気症候群を起こすこともあります。
また、体重による負担は膝や股関節、腰にかかり、変形性膝関節症や腰痛などの運動器疾患を引き起こします。関節が痛むと体を動かしにくくなり、さらに体重が増えるという悪循環に陥りやすい点にも注意が必要です。
月経異常・不妊・腎臓病など
脂肪組織は女性ホルモンの代謝にも関わっているため、肥満は月経不順や排卵障害を起こし、不妊の原因となることがあります。
腎臓では、肥満によって負担が増え、たんぱく尿や腎機能の低下が起こることがあり、これを肥満関連腎臓病と呼びます。
さらに肥満症診療ガイドラインでは、診断基準の11項目には含まれないものの、一部のがんなど肥満との関連が指摘されている病気も挙げられています。
肥満症の治療方法
肥満症の治療は、食事療法・運動療法・行動療法が基本です。これらで十分な効果が得られない場合に薬物療法を、高度肥満症などでは外科療法(手術)を検討します。
減量の目標は、肥満症では現体重の3%以上、高度肥満症では合併する健康障害に応じて現体重の5~10%とされています。体重70kgの人であれば、まず約2kgの減量が目安です。大幅な減量でなくても、血糖や血圧、脂質などの改善が期待できます。具体的な目標や達成までの期間は、合併症の状態などをふまえて医師と相談して決めます。
食事療法・運動療法・行動療法
食事療法では、肥満症診療ガイドラインで、1日の摂取エネルギー量を目標体重1kgあたり25kcal以下(高度肥満症では20~25kcal以下)とする目安が示されています。実際の量は、年齢や合併症、栄養状態に応じて医師や管理栄養士が個別に設定します。エネルギーを減らしながらも、筋肉量を保つためにたんぱく質やビタミン、ミネラルが不足しないよう、栄養バランスを整えることが大切です。
運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動を習慣にし、筋力トレーニングを組み合わせます。運動はエネルギー消費を増やすだけでなく、インスリンの効きをよくし、減量中の筋肉量の低下を防ぐ役割もあります。膝や腰に痛みがある場合は、水中歩行など関節への負担が少ない運動を選びます。
行動療法は、食事や運動の習慣を無理なく続けるための方法です。毎日決まった時間に体重を測って記録する、食べた物を書き出す、早食いやながら食いを見直す、といった取り組みを通じて、太りやすい行動のパターンに自分で気づけるようにします。
薬物療法
食事療法・運動療法を続けても十分な減量が得られない場合は、薬物療法を検討します。記事作成時点で、国内で肥満症に対して保険適用がある主な薬は次のとおりです。
※表は横にスクロールしてご覧いただけます。
| 一般名(販売名) | 投与方法 | 保険適用上の主な対象 |
|---|---|---|
| セマグルチド(ウゴービ) | 週1回の皮下注射 |
・肥満症 ・高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを有する ・BMI27以上かつ肥満に関連する健康障害が2つ以上 または ・BMI35以上 ・食事療法・運動療法で十分な効果が得られない場合 |
| チルゼパチド(ゼップバウンド) | 週1回の皮下注射 | セマグルチド(ウゴービ)と同様 |
| マジンドール(サノレックス) | 1日1回の内服 |
・高度肥満症 ・BMI35以上 または ・肥満度+70%以上 |
セマグルチドとチルゼパチドは、食欲や消化管の働きに関わるホルモンと同じように作用し、食欲を抑えることで減量を助ける薬です。使用できるのは、高血圧・脂質異常症・2型糖尿病のいずれかがあることを前提に、BMI27以上で肥満に関連する健康障害を2つ以上有するか、BMI35以上の場合に限られます。BMI35以上であっても、この3つの病気のいずれもない場合は対象になりません。
さらに厚生労働省の最適使用推進ガイドラインでは、投与する医療機関で6か月以上、食事療法・運動療法に取り組み、その間に2か月に1回以上管理栄養士の栄養指導を受けても十分な効果が得られなかったことを条件としています。投与期間も、同ガイドラインでセマグルチドは最大68週間、チルゼパチドは最大72週間とされており、効果が見られない場合は途中で中止を検討します。処方できる医療機関にも、専門医の在籍などの要件が設けられています。
マジンドールは脳の食欲中枢に作用して食欲を抑える飲み薬で、対象は高度肥満症に限られ、投与期間は3か月が限度とされています。
いずれの薬も、食事療法・運動療法に置き換わるものではなく、それらと併用して使います。使用できるかどうか、用量の調整や中止の判断は、医師が診断や合併症の状態に基づいて行います。
減量・代謝改善手術
高度肥満症などで、内科的な治療を6か月以上続けても十分な効果が得られない場合は、手術による治療が検討されます。減量だけでなく、糖尿病などの代謝異常の改善も目的とすることから、「減量・代謝改善手術」と呼ばれます。
国内で保険適用となっている代表的な術式が、腹腔鏡下スリーブ状胃切除術です。おなかに小さな穴を開けて行う腹腔鏡手術で、胃を縦に細長く切除して容量を小さくし、食べられる量を減らします。
保険適用となる代表的な条件は、6か月以上の内科的治療で十分な効果が得られないことを前提に、次のいずれかに当てはまる場合です。
- BMI35以上で、糖尿病、高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪性肝疾患のうち1つ以上を合併している
- BMI32以上35未満で、HbA1c8.0%以上の糖尿病を合併している、または高血圧症、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、非アルコール性脂肪性肝疾患のうち2つ以上を合併している
実際に手術の対象となるかは、合併症の状態などをふまえて医療機関が判断します。手術は施設基準を満たした医療機関で行われ、術後も栄養状態の管理や体重の維持のため、長期的な通院が必要です。
肥満症は何科を受診する?
肥満症が気になる場合は、まず内科やかかりつけ医に相談するのが一般的です。高度肥満症や、薬物療法・手術を検討する段階では、専門外来の受診も選択肢になります。
まずは内科やかかりつけ医へ
健康診断でBMI25以上と判定され、血圧や血糖、脂質、肝機能、尿酸値などの異常も指摘された場合は、内科を受診しましょう。糖尿病内科や内分泌内科、生活習慣病を扱う内科であれば、肥満症の評価から食事・運動の指導まで相談しやすいでしょう。
肥満の中には、甲状腺機能低下症などのホルモンの病気や、服用している薬の影響で体重が増える「二次性肥満(症候性肥満)」もあります。この場合は原因となる病気の治療が優先されるため、最初に医療機関で原因を確認しておくことが大切です。受診の際は、健康診断の結果や体重の推移、服用中の薬がわかるものを持参すると、診断がスムーズに進みます。
専門外来を検討するケース
次のような場合は、肥満外来や肥満症専門外来のある医療機関を検討するとよいでしょう。
- BMI35以上の高度肥満症である
- 食事・運動の見直しを続けても減量がうまくいかない
- 薬物療法や減量・代謝改善手術について相談したい
- 糖尿病や睡眠時無呼吸症候群など、複数の健康障害を合併している
日本肥満学会は、専門外来や管理栄養士による栄養指導の体制などを備えた医療機関を「肥満症専門病院」として認定しています。また、前述の肥満症治療薬は処方できる医療機関に要件があり、手術も施設基準を満たした医療機関でしか受けられません。かかりつけ医に相談し、必要に応じて紹介を受けるのが確実です。
まとめ
肥満は脂肪が過剰にたまった状態で、日本ではBMI25以上で判定されます。そのうえで、糖尿病や高血圧などの健康障害を合併している場合や、内臓脂肪型肥満で将来の合併が予測される場合が肥満症であり、医学的な減量が必要な疾患として治療の対象になります。
治療の基本は食事療法・運動療法・行動療法で、まずは現体重の3%以上の減量が目標です。それで十分な効果が得られない場合には薬物療法を、高度肥満症などでは減量・代謝改善手術を検討します。健康診断で肥満や関連する数値の異常を指摘されたら、体重だけの問題と考えず、まずは内科やかかりつけ医に相談してみてください。
監修医師のコメント
肥満は脂肪が過剰にたまった状態で、日本ではBMI25以上で判定されます。そのうえで、糖尿病や高血圧などの健康障害を合併している場合や、内臓脂肪型肥満で将来の合併が予測される場合が肥満症であり、医学的な減量が必要な疾患として治療の対象になります。
治療の基本は食事療法・運動療法・行動療法で、まずは現体重の3%以上の減量が目標です。それで十分な効果が得られない場合には薬物療法を、高度肥満症などでは減量・代謝改善手術を検討します。健康診断で肥満や関連する数値の異常を指摘されたら、体重だけの問題と考えず、まずは内科やかかりつけ医に相談してみてください。

水戸先生
肥満か肥満症かは、体重だけでは判断できません。気になったら、まず健康診断の結果を見直してください。血圧、血糖、脂質、肝機能、尿酸値などに異常を指摘されていれば、肥満症の可能性があります。その場合は、健診結果を持って内科を受診しましょう。
避けてほしいのは、「太っているだけ」と指摘を放っておくことです。極端な食事制限や、ネットで手に入るやせ薬に頼ることも避けてください。まずは医療機関で現状を確認するところから始めましょう。
よくある質問
肥満と肥満症はどう違うのですか?
肥満はBMI25以上で体脂肪が過剰にたまった状態を指し、それだけでは病気とはされません。肥満に糖尿病や高血圧などの健康障害が伴う場合や、内臓脂肪型肥満の場合に、治療が必要な疾患として肥満症と診断されます。
BMIが25以上なら治療が必要ですか?
BMI25以上でも、健康障害がなく内臓脂肪型肥満にも当てはまらなければ、肥満症とは診断されず、肥満症としての治療の対象とは限りません。ただし体重が増えるほど健康障害のリスクは高まるため、生活習慣の見直しや定期的な健康診断での経過観察は大切です。
肥満症の治療に保険は使えますか?
肥満症の診断や、医師による食事・運動の指導などは保険診療の対象になります。一方、薬物療法や手術は、肥満症と診断されただけでは保険適用にならず、BMIや合併する健康障害の種類・数、それまでの治療期間などについて、さらに細かな条件を満たす必要があります。
参考資料
日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2022」
日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」13-1 肥満・肥満症の診断はどのように行うか?
厚生労働省「最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)~肥満症~」
医薬品医療機器総合機構「ウゴービ皮下注 電子添文」
厚生労働省「最適使用推進ガイドライン チルゼパチド」
医薬品医療機器総合機構「サノレックス錠0.5mg 電子添文」
国立保健医療科学院「セマグルチド(ウゴービ皮下注)費用対効果評価 背景資料」
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